土星探査機カッシーニ 昇りつめてとらえたリングの絶景
【2007年3月2日 NASA Mission News】
人類が初めて見る光景を、NASAとヨーロッパ宇宙機関(ESA)の土星探査機カッシーニが送ってきた。数か月かけてたどり着いた位置から見下ろした、土星の周りを1周するリング(環)だ。
2004年6月に土星へたどり着いたカッシーニは、2年半同じところを回り続けていたわけではない。惑星本体、環、そして衛星の数々…あまりに見どころが多いので、少しずつ軌道を変えてはいろいろな光景を写してきた。それでも、環と同じ面から大きくずれたことはない。なぜなら、重要な被写体である衛星も、ほぼ同じ面に沿って回っているからだ。
この数か月間は、まったく新しい軌道への修正に費やされた。公転面を環に対して傾けていったのである。今までにない角度から土星を撮影するためだ。
やはり、絶景というのは見下ろすものなのだろうか。カッシーニの画像解析チームを率いるCarolyn Porco博士も次のように感想を述べた。
「ついに、何年間も待ち続けていた光景を見ることができました。上から見下ろした土星、巨大な銅メダルがごとく眼下に広がる環は、いつも見ている世界と同じには思えません。実に息をのむ光景で、めまいさえ感じそうです」
土星の本体は環よりもはるかに明るいので、やや露光オーバー気味に写っている。それに対して、茶目っ気のある研究者が画像処理をほどこし環だけを取り出した画像も公開された。もっとも、土星本体の影が映ったままなので、「リング」というよりは“Cassini”の「C」に見えるかもしれない。