ビーナス・エクスプレス1周年
【2007年4月16日 ESA News】
ESAの金星探査機ビーナス・エクスプレスが金星到着1周年を迎え、記念に画像が公開された。金星の夜側を赤外線で撮影した画像で、大気中の微量な酸素による淡い光がとらえられている。
2006年4月11日に金星に到着し、1周年を迎えたばかりのビーナス・エクスプレスだが、すでに膨大な量のデータを集めている。今回公開されたのは、赤外線観測で得られた、酸素による「大気光」だ。酸素による大気光は地上観測で発見され、その後ロシアの探査機ベネーラやアメリカのパイオニアによって観測が行われた。しかし、金星探査機は1994年以来であることから、ビーナス・エクスプレスによる最新の観測に期待が集まっている。
大気光とは、大気中の原子が結合して分子となる際に淡い光を放射する現象だ。金星の大気中、酸素はひじょうに珍しい。これらの酸素はどこからやってきたのだろう。まず、金星の昼側において、高い高度にある大気の層は太陽からの強い紫外線を受ける。それにより、金星に豊富に存在する二酸化炭素分子から酸素原子が離れる。そして、それら酸素原子は、太陽の光があたる側の反対の方向、つまり金星の夜側に流れ込む。さらに、原子が高度の高い層から中間の層へ移動する際に、原子の結合が起こり、酸素(O2)がつくられる。この際放出される特定の波長は、地上からはもちろん、軌道上にいる探査機からも観測が可能となる。
この酸素大気光が時間とともにどんな変化を見せるのかは、3つの点でひじょうに重要である。まず第一に、通常厚い大気に覆われて見ることのできない、より内側の大気について、その動きやふるまいを明らかにすることができる。第二に、この現象の分析から、全球レベルの大気中で起きる化学的変化やその役割を明らかにすることができる。同時に、原子の結合が起こるスピードを計測することで、金星で起きている他の種類の物質の結合や生成についても明らかにすることが将来可能となるかもしれない。第三には、酸素大気光は中間層と大気圏、さらにはもっと上層とのエネルギー交換についての情報をもたらしてくれる。
今日までビーナス・エクスプレスは、金星の南半球に存在する二つ渦や、硫酸の雲の構造や動きに関する立体データ、表面温度や高度毎の大気の温度の分布などを明らかにしている。しかし、これらは集められたデータのほんの一部でしかない。
ビーナス・エクスプレス計画にたずさわるESAの科学者Hakan Svrfhrn氏は「データの分析には、すべての研究チームを動員しても相当の労力が必要となります。しかし、その苦労はすばらしい結果となって、必ず報われますよ」と話している。