生命の起源は超新星爆発にも耐えた?

【2007年7月3日 Spitzer Newsroom

超新星爆発の残骸付近で、生命の材料となる有機物が大量に検出された。生命は地球の過酷な環境にしぶとく耐えてきたが、生き残りの歴史は地球が誕生する前からも始まっていたのかもしれない。


超新星残骸 N132Dの画像

超新星残骸 N132D。ピンク色は、周辺のガスの粒子と爆発の衝撃波が衝突していることを示している。淡い緑色がPAHs。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/A. Tappe and J. Rho (SSC-Caltech))

生命のもととなった有機物は、どこからやってきたのだろうか。起源の一つとして、外からやってきた彗星があげられている。彗星によって原始地球にもたらされた有機物は、過酷な環境にさらされたことだろう。形成されて間もない地球では、隕石などが次々と降り注ぎ、衝突の熱で地表は数千度という高温の世界と化していたと考えられている。

地球の生命は次々とやってくる過酷な環境に耐えてきた。そのしぶとさは、生命誕生以前の材料の段階から発揮されていたのだろう。そして、天文学者によれば、地球誕生以前にはもっと過酷なサバイバルがあったかもしれない。

米国ハーバード・スミソニアン天体物理センターのAchim Tappe博士は、NASAの赤外線天文衛星スピッツァーを使った観測で、宇宙におけるもっとも過酷な環境を生き延びたと考えられる有機分子を検出した。その環境とは、質量の大きな星が一生の最期に起こす超新星爆発だ。

Tappe博士はわれわれから16万3千光年の距離にある、大マゼラン銀河中の超新星残骸「N132D」を観測した。画像中、ピンク色に写っているのがN132Dで、超新星による衝撃波がここまで広がっていることを示す。一方、緑は多環式芳香族炭化水素(PAHs)と呼ばれる分子の広がりだ。超新星爆発の衝撃波は、周辺の粒子をことごとく破壊してしまうとされている。だが、Tappe博士は衝撃波の先端にも大量のPAHsが残っていることをつきとめた。

PAHsは星が誕生しようとしている領域や、やがて惑星になるであろう、若い星を取り巻く円盤の中にも見つかっている。さらには、彗星に含まれることも知られている。その豊富さ、そしてしぶとさを考えると、われわれの一部はかつてPAHsだったと言えそうだ。

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