系外惑星の大気から初めて「水」の証拠
【2007年4月17日 Lowell Observatory Press Room】
太陽系以外の惑星から初めて水を検出したとする研究が発表された。ただし、巨大ガス惑星中の水蒸気として。太陽系外のガス惑星が水蒸気を大量に含むことは理論的には当然とされていたが、観測から検出することはひじょうに困難なことだ。
系外惑星に水が存在する証拠を初めて見つけたと発表したのは、米ローウェル天文台の天文学者Travis Barman氏。水が存在するとされたのは、ペガスス座の方向約150光年の距離にある有名な系外惑星「HD 209458b」である。HD 209458bは地球から見て恒星の前を横切る(トランジット)現象が初めて観測された系外惑星で、この性質を利用した数々の発見をもたらしてきた。
はるか遠くにある系外惑星は、中心の恒星と比べてあまりに暗く、単独の天体として観測するのは今のところ不可能だ。だが、惑星のトランジットの際、恒星の光の一部は惑星の大気を通過してから地球に届く。このように大気が作る「影」からその成分を調べる試みは、HD 209458bがトランジットを起こすことがわかった1999年以来、NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)などによって盛んに行われた。これまでに、ナトリウム、水素、酸素、炭素など、さまざまな物質が検出されている。
一方、理論から系外惑星の大気を推定した場合、大量の水が存在すると言われている。HD 209458bから恒星までの距離は、地球から太陽までの距離の20分の1以下だが、そのような灼熱の環境にあっても巨大ガス惑星には水蒸気が含まれているはずなのだ。トランジットの観測結果と理論を比較する試みは何度か行われてきたが、水蒸気を含む大気モデルには否定的な結果が出ていた。
Barman氏は、恒星の方の成分、惑星大気に含まれる微粒子、さらに大気中のガスが熱や光から受ける影響などを考慮し、新たなモデルを構築した。これをHSTの観測結果と照らし合わせた結果、水蒸気を含むモデルは観測と一致し、含まないモデルは一致しなかった。それだけでなく、存在は確認されても観測量が理論値と合わなかった物質についても、うまく説明できるようだ。
ところで、HD 209458bについては、別の研究グループがNASAの赤外線天文衛星スピッツァーを使って光の特性を「直接」得ることに成功したばかりだ。それはトランジットの逆、すなわち惑星が恒星の後ろに隠れたときの光を、並んでいるときの光から引き算する方法である。こちらの観測結果では水蒸気が検出されなかったとして注目を集めていた。
これに対しBarman氏は論文中で「スピッツァーから得られたのはHD 209458bの『昼』側の大気が放つ光だけである」として、そうした条件では水が存在したとしても検出できないことを示唆した。Barman氏が使ったデータは、「昼」と「夜」の境目にある大気を通過した恒星の光だ。
理論上、水蒸気の存在は間違いない。「1つの系外惑星で、水蒸気が存在するという結果がでたのですから、ほかの系外惑星にも水蒸気が含まれると信じてよいのではないでしょうか」とBarman氏は語っている。
ステラナビゲータVer.8で系外惑星の位置を表示
ステラナビゲータVer.8では、HD 209458bが存在する方向を星図に表示させることができます。200個近くにのぼる、惑星の存在が確認された恒星を追加天体として「コンテンツ・ライブラリ」で公開しています。ステラナビゲータ Ver.8をご利用の方は、ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードしてください。
なお、惑星HD 209458bが存在する恒星には「HD 209458」をはじめとしてさまざまな呼び方があります。「コンテンツ・ライブラリ」からダウンロードできるデータには、変光星としての呼び名「V376 Peg」で登録されています。また、通常の星図にも恒星「HIP 108859」として表示されています。