超巨大ブラックホールの「食糧事情」の変化を探る
【2007年8月15日 Chandra Photo Album】
銀河の中心に超巨大ブラックホールが存在する割合は、昔の方が高かったようだ。宇宙の歴史で早い時期ほどガスが豊富に存在し、ブラックホールはそれを飲み込んで急成長したらしいことが、NASAのX線天文衛星チャンドラの観測で明らかになった。
銀河の中心には、周囲の物質を飲み込んでばく大なエネルギーを生み出す超巨大ブラックホールが存在する場合がある。これは活動銀河核とよばれ、強いX線や電波、ジェットなどの放出を伴うことが知られている。
チャンドラは銀河が寄せ集まって作る大規模な構造、銀河団を撮影した。そこにはX線で輝く銀河間高温ガスとともに、エネルギーの高いX線を放つ活動銀河核が点状に写っている。チャンドラは2つの世代の銀河団を観測し、そこに含まれる活動銀河核の割合を調べた。
2つの世代とは、約57億光年離れた銀河団と、約25億光年離れた銀河団だ。遠い銀河団ほど、昔の、つまり若いころの姿を見せていると考えられる。画像は、はと座の方向57億光年の距離にある「若い」銀河団CL 0542-4100で、エネルギーの高い(青い疑似色で表現された)X線を放つ活動銀河核がいくつか見られる。こうした観測から、遠くて「若い」銀河団には、近くて「年をとった」銀河団よりも20倍も多くの活動銀河核が存在することがわかった。
宇宙誕生から間もないころの銀河には、星の材料となるガスが豊富に含まれていて、現在よりも星の誕生が盛んだったようだ。同時に、ガスはブラックホールにとって成長するための「食事」にもなる。この研究を率いた米国オハイオ州立大学のJason Eastman氏は次のようにたとえる。「若い銀河団のブラックホールは、エサの豊富な水族館にいるピラニアのようなものです。食事のために競争する必要もなく、すべてのピラニアがどん欲にエサを食べて急成長したというわけです」
しかし、「水族館」のエサにも限りがある。超巨大ブラックホールはガスを飲み込むだけでなく、その過程で放つ強烈な放射で周囲のガスを散らしてしまうのだ。その結果「年をとった」銀河団の銀河はガスに乏しく、新世代の「ピラニア」もあまり成長できないらしい。