赤外線天文衛星「あかり」、主要ミッション終了

【2007年8月28日 宇宙科学研究本部 トピックス

JAXAの赤外線天文衛星「あかり」(ASTRO-F)は、観測装置と望遠鏡を冷却する液体ヘリウムを予定どおり使い切った。これにより遠赤外線で全天をくまなく観測するなどの主要なミッションは終了し、今後は液体ヘリウムを必要としない近赤外線で観測が続けられる。


「あかり」は2006年2月22日に鹿児島県内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられ、同年5月8日から本観測を開始した。口径68.5センチメートルの望遠鏡と幅広い種類の赤外線をカバーする2機のカメラを備え、目指すのは全天の「赤外線地図」作りとさまざまな天体の詳細な観測である。

ある程度の温度を持った物体は、その温度に対応する赤外線を放射する。そのため、観測装置そのものから赤外線が出ないように、「あかり」には冷却装置が搭載されている。中でも遠赤外線(波長の長い赤外線)をとらえる装置は熱に敏感なので、液体ヘリウムを使って摂氏マイナス271.2度まで冷やされていた。

「あかり」打ち上げ時には液体ヘリウムが170リットル積まれていた。設計寿命どおりの550日がすぎた2007年8月26日午後5時33分(日本時間)、液体ヘリウムはすべて蒸発、遠赤外線と中間赤外線での観測は終了した。全天の約94%をカバーする遠赤外線の「地図」が得られたほか、中間赤外線では特定領域を狙った観測が5000回以上行われるなど、観測目標はほぼ達成した。今後は膨大なデータの解析から、続々と成果が出てくることだろう。

一方、近赤外線(波長の短い赤外線)の撮影装置だけは、液体ヘリウムを使わない機械式冷却でも性能を発揮できる。移行準備期間をへて、「あかり」の運用は新たな段階に入る。