「あかり」が見た、渦巻き銀河M101の巨大な星形成領域

【2007年9月10日 宇宙科学研究本部 トピックス

JAXAの赤外線天文衛星「あかり」(ASTRO-F)による渦巻き銀河M101の観測で、外縁部で中心付近よりも活発な星形成が起こっていることが明らかになった。一般に渦巻き銀河では中心付近の方が星形成が活発であると考えられており、「あかり」による観測から、M101が一風変わった銀河であることが示された。


「あかり」が明らかにしたM101の冷たいちり(左)と暖かいちり(右)

「あかり」が明らかにしたM101の冷たいちり(左)と暖かいちり(右)。クリックで拡大(提供:JAXA)

M101の擬似カラー画像

M101の擬似カラー画像。明るく赤い塊が外縁部の星形成領域。クリックで拡大(提供:[赤外線]JAXA、[可視光]DSS R-band(The National Geographic Society)、[遠紫外線]GALEX(NASA))

M101は、おおぐま座の方向2400万光年の距離にある渦巻銀河だ。直径は約17万光年あり、われわれの天の川銀河の2倍近い。

赤外線天文衛星「あかり」は、M101でどのような星形成活動が起こっているのかを詳しく調べる目的で、遠赤外線サーベイヤ(FIS)を使い、65、90、140、160μm(マイクロメートル)という4種類の波長帯で観測を行った。その結果、若い高温の星によって暖められた「暖かいちり」と太陽のような普通の星によって暖められた「冷たいちり」の分布が明らかとなった。

冷たいちりは銀河の中心に集まり、銀河全体にも分布していた。それに対し、暖かいちりは渦巻く腕に沿って、とくに銀河外縁部付近で、斑点状にかたまって存在していた。この斑点は、巨大な星形成領域の位置にあたる。このことは、外縁部では中心付近に比べて、より活発な星の生成が起こっていることを示している証拠といえる。

ところで、天の川銀河のような渦巻き銀河では、一般に中心付近の方が星形成が活発だと考えられている。M101では、なぜ外縁で星形成が盛んなのだろうか。M101の外縁部には、伴銀河から引き寄せられたガスが、秒速150kmで降り注いでいて、これが星形成を引き起こしていると考えられている。降り注ぐ水素ガスは観測で確認されているのだが、なぜ外縁部だけなのかはよくわかっていない。

なお、「あかり」はM101以外にも近傍の銀河の観測を行っており、今後の分析で、銀河における星形成を引き起こすメカニズムについて新たな情報が得られることが期待されている。