ネオンが目印 ガス円盤から惑星の形成過程を追う
【2007年9月19日 Spitzer Space Telescope】
NASAの赤外線天文衛星スピッツァーを使った観測で、恒星を取り囲む円盤の中からガスの一種、ネオンが見つかった。地上では装飾や照明に使われて目を引くネオンだが、恒星の回りのネオンガスは、惑星の形成過程を考察する上で貴重な目印となるかもしれない。
ネオンは大気中にごく微量に含まれる元素だ(体積比で0.002パーセント)。ネオン原子はほかの原子ときわめて結びつきにくく、分子を形成せずに単体でガスとして存在している。一般にネオンといえば、ネオンサインが思い浮かぶ。これはガラス管などに封入したネオンガス(ネオン以外のガスが使われることもある)に電圧をかけると発光する性質を利用したもので、看板などに使われているネオンサインはとても目立ち、街中ではよい目印となる。
オランダや米国などの研究チームは、若い恒星を取り囲む円盤に含まれるネオンからの光を検出することに成功した。ネオンからの光といっても、決してネオンサインではない。ネオン原子は中心の恒星が放つX線や極紫外線を吸収し、決まった波長の赤外線として放出していて、これを赤外線天文衛星スピッツァーでとらえたのだ。ネオンの存在は、研究者にとってよい目印となるかもしれない。
生まれたばかりの恒星は、ちりとガスの円盤に囲まれている。円盤は時間とともに変化し、場合によっては惑星が生まれるが、その過程を追うにはガスの変動を調べることが重要だ。しかし、ガスを構成する元素の大半は、姿を変えてしまう。複数の元素が結びつけば水のような分子になったり、凝集してちりとなったり、氷の粒となることもある。その点、ネオンは姿を変えず安定しているため、純粋な変動を追うことができるのだ。
研究チームを率いたオランダ宇宙研究機関およびライデン天文台のFred Lahuis博士は「およそ20個の、年代が異なる恒星系からネオンの光を検出しましたが、これは私たちにとってわくわくすることです」と話す。ネオンは若い恒星を囲むガスの指標となり、円盤のさまざまな発達段階について物語ってくれる。
円盤に含まれるちりは衝突合体をくり返し、雪だるまのように成長する。あるものは地球のような岩石惑星となるが、じゅうぶん大きければ、まわりのガスを大気として取り込み、木星のような惑星になる。ガスの分布を調べると、こうした巨大ガス惑星が誕生する条件を絞り込めるという。
一方、惑星が形成されたあと、円盤を満たしていたガスが消える過程についても、ネオンの輝きが密接にかかわっているかもしれない。
円盤の進化に伴い、ガスの大半は恒星に吸収されるが、それが収まると、今度はガスが惑星系の外へ逃げ出す。ガスが吸収したエネルギーの量がじゅうぶん大きくなれば、恒星や円盤の重力を振り切ることができるようになるのだ。「光蒸発」と呼ばれるこのプロセスは、早く進みすぎれば巨大ガス惑星が形成できないことから、研究者の関心を集めている。
最後に、若い恒星を囲むガスは、生命に適した惑星を形成する上でも欠かせないかもしれない。例えば、ガスの中を進むことで惑星が円軌道を通るようになる可能性がある。これは惑星の気候を安定させることになる。そして、ガスは岩石型惑星の大気として取り囲まれることも忘れてはならない。大気がなければ生命は維持できないし、高度に文明が発達してネオンサインが街を彩ることもないだろう。