土星のA環に、新たに衛星の残骸8個を発見
【2007年11月9日 CU-Boulder News Releases】
土星のA環には、彗星や小惑星の衝突で破壊された衛星の残骸がつくるプロペラ型の構造が2006年に発見されていたが、新たに同様の構造が8つ発見された。
米コロラド大学ボールダー校のMiodrag Sremcevic氏らが率いる研究チームによって、土星のA環に、プロペラのような形をした構造が8つ発見された。
これは、彗星や小惑星の衝突によって破壊された衛星の残骸が、周辺の粒子に重力的な影響を及ぼしたために形成されたもの。構造の長さは約16キロメートルで、残骸1つの大きさは直径100メートルほどだ。
研究チームでは、まだ未発見の残骸が数千個単位で存在しており、1つ1つの大きさは15キロメートル以上と計算している。
Sremcevic氏は、研究成果について「われわれの研究によって、衝突によってつくられた残骸の存在が確固たるものとなりました」と話している。
実はSremcevic氏は、コロラド大学の大学院生であった2000年にプロペラ型の構造の存在を予測していた。その研究には、今回Sremcevic氏とともに研究を率いたドイツにあるポツダム大学のFrank Spahn氏も参加していた。
その後実際にプロペラ構造が発見されたのは2006年。米コーネル大学のチームが、NASAとヨーロッパ宇宙機関(ESA)の土星探査機カッシーニがとらえたA環の画像に、初めて4つを発見した。
その発見を受けてSremcevic氏らは、カッシーニの画像分析を開始した。Sremcevic氏らによれば、残骸の大きさは1つがサッカーグラウンドほど。残骸が存在している範囲は、幅が約3000キロメートルとひじょうに狭く、土星のリング全体と比べるとその80分の1しかない。
残骸の起源は、彗星や小惑星による衝突で大きな衛星が破壊されたものと考えられている。このことは、土星の環が、大きな衛星が崩壊しその残骸が次々と衝突することで形成されたとする考え方を支持している。
Sremcevic氏は、「これらの残骸は、土星の環の形成と進化のなぞというパズルを完成させるための、新たな1ピースです。われわれの発見とそこから導かれる新たな結果が、将来の研究に取り入れられると信じています」と話している。