2つの銀河が見せる優雅なダンス
【2007年11月14日 HubbleSite】
NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)が撮影したArp 87の画像が公開された。大きい方の銀河NGC 3808からは、伴銀河であるNGC 3808Aに腕がからみつくように伸びている。互いに作用し合う姿は、さながらダンスを踊っているかのようだ。
しし座の方向約3億光年の距離にある2つの銀河NGC 3808とNGC 3808Aは、Arp 87の名前で知られている。
Arp 87の「アープ(Arp)」とは、天文学者ハルトン・アープの名前からつけられたもの。アープは、1960年代にパロマー山天文台のヘール望遠鏡を使い、特異な形をした銀河を撮影し、カタログを作成した。Arp 87は、その際に撮影されカタログに加えられた銀河の1つだ。
HSTによるArp 87の画像には、カタログが作成されたころには決して見ることのできなかった、2つの銀河の細かな構造がとらえられている。
画像中、右側にあるのがほぼ真上から見た銀河NGC 3808で、その周りには銀河を取り囲むように明るく青い星形成領域があり、暗いちりからなる腕も見えている。一方、左側にあるNGC 3808Aは、ほぼ真横から見た姿をしている。銀河面に対して垂直に取り巻く星やガスからなるリング状の構造は、「ポーラー・リング」と呼ばれている。
また、NGC 3808から流れ出るガスやちりが、伴銀河NGC 3808Aとの間をつなぐように腕を形成している。Arp 87に見られるように、合体の過程にある銀河には、らせん状の構造や2つの銀河をつなぐような構造が見られる。これは、小さな銀河の重力によって、大きい方の銀河に存在する星やガスが引っ張られるためだ。
複数の銀河が接近し、互いに重力的に作用し合うと、頻繁に活発な星形成が引き起こされる。星間ガスが発する熱の観測データなどから、そのことが示されている。しかし、HSTは、より明らかな証拠として、ひじょうに活発な星形成が進む銀河には、数多くの超星団が存在しているという事実を明らかにした。超星団とは、何十万個もの若い星がひじょうにコンパクトな領域にひしめいている天体である。