ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた銀河の触手
【2008年8月28日 HubbleSite】
NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)が、ペルセウス座銀河団の銀河NGC 1275を観測し、まるで触手のように四方八方に伸びる赤く細いガスの構造をとらえた。ほかの銀河にも同様の構造があることは知られているが、これほどの解像度でとらえられたのは、初めてのこと。
ペルセウス座の方向約2億3000万光年の距離にある銀河NGC 1275は、中心に超巨大ブラックホールが存在し、強力なX線や電波を放射している。
HSTによるNGC 1275の観測で、銀河の周辺に伸びる細い糸のようなガスの筋がとらえられた。細い筋の1本1本が分離してとらえられたのは、初めてのことである。
これは、強力な磁場が広大な領域に影響を及ぼしている顕著な例だ。研究者たちは、電荷を帯びたガス(プラズマ)が強力な磁場によってその場に留められているのでこのような構造が見えると考えている。構造を形成しているガスは、ブラックホールの活動によって銀河の中心から引きずり出されたものである。
ガスの筋1本あたりの質量は太陽の約100万倍で、幅は約200光年。多くはまっすぐに伸びており、2万光年ほどの長さのものもある。
この構造は、ブラックホールと銀河団内に満ちている数百万度の高温ガスとの複雑な関係を理解するために、可視光で観測できる唯一の現象である。しかし、なぜ高エネルギーの環境下で分散や崩壊もせずに長い間持ちこたえているのか、その理由はよくわかっていない。HSTによる観測結果は、巨大ブラックホールが周辺の環境にどのような影響を与えるかを知る重要な手がかりのひとつとなるだろう。
また、同様の細い筋構造は、遠く離れたほかの銀河の周辺にも発見されている。しかし、HSTによるNGC 1275の解像度に迫る観測をほかの銀河でも行うのは、あまりに遠すぎて残念ながら不可能である。そのため、NGC 1275の観測結果は、遠方銀河の構造を理解する上でも貴重な研究材料となる。