「すざく」、宇宙一熱いガスを観測
【2008年11月4日 JAXA】
宇宙航空研究開発機構(JAXA)のX線天文衛星「すざく」が、約50億光年離れた銀河団に温度3億度のガスが存在する証拠をとらえた。これほどの高温が宇宙で観測されたのは初めて。このガスは、銀河団どうしの衝突で加熱されたのではないかとみられている。
われわれの天の川銀河は、数百の銀河からなる「おとめ座銀河団」に所属しているが、その外にも同じような銀河団が数多く見つかっている。
銀河団を可視光線で見ると、その名のとおり銀河の集団しか見えないが、X線で観測すると全体を包み込むガスが浮かびあがってくる。X線を放つほどのガスは、数千万度以上の高温に相当する。銀河団は多くの銀河と高温ガス、そしてガスを重力で引き止めていると考えられるダークマター(暗黒物質)からなる巨大な天体なのだ。
JAXA/独・マックスプランク研究所の太田直美研究員らは、銀河団が形成される過程を探るべく、おとめ座の方向50億光年の距離にある銀河団 RXJ1347 を「すざく」で詳しく観測した。もともと RXJ1347 はX線できわめて明るい銀河団として知られていたが、この観測により、何と温度3億度という超高温ガスが放つX線が検出された。
RXJ1347の大きさは約500万光年で、ガスの平均温度は約1億度。NASAのX線天文衛星チャンドラの観測結果と合わせると、3億度に加熱されているのは、約45万光年の範囲だった。
一般に銀河団のガスを暖めるのは、ダークマターに引き寄せられることで解放された重力エネルギーと言われているが、3億度に達するにはさらに別のメカニズムが必要だ。今のところ、RXJ1347は2つの銀河団が毎秒4000kmという高速で衝突した直後の姿なのではないかとする説が有力だ。
今回観測された宇宙一熱いガスは、宇宙一大きなスケールの天体が、衝突によってさらに大きく成長していく証拠なのかもしれない。