表面温度20万度の星がとらえられた

【2009年12月11日 University of Manchester

今年5月にハッブル宇宙望遠鏡(HST)に取り付けられた新しい観測機器が、惑星状星雲NGC 6302(バグ星雲)の中心にある星をとらえた。この星は表面温度が20万度で、天の川銀河のなかでも、とくに高温なもののひとつだ。


HSTがとらえたバグ星雲と中心星周辺のクローズアップ画像

HSTがとらえたバグ星雲と中心星周辺のクローズアップ。クリックで拡大(提供:Anthony Holloway & Tim O'Brien, JBCA. )

さそり座の方向約3500光年の距離にあるバグ星雲は、もっとも華やかな姿をした惑星状星雲の1つである。惑星状星雲とは、太陽のような星が一生の終わりに放出したガスが輝く天体だ。われわれの太陽を含めたほとんどの恒星は、最終的に全質量の80パーセントほどを放出し、残された高温の中心核は徐々に冷えていく。

バグ星雲はこれまでに数多く観測されてきたが、中心核の姿は厚い雲にかくされていて、だれも見たことがなかった。

英・マンチェスター大学のAlbert Zijlstra教授らの研究チームは、5月に取り付けられたHSTの新しい広視野/惑星カメラ3(WFPC3)を使ってバグ星雲を観測し、その中心核の姿をとらえた。表面温度は20万度で、太陽の30倍以上もある。

マンチェスター大学の研究生で、現在ヨーロッパ南天天文台(ESO)に勤務するCezary Szyszka氏は「最高温度に近い状態にある中心核をとらえることができ、幸運でした。今後は徐々に冷えていくことでしょう」と話している。

バグ星雲の中心に残された星の質量は太陽の3分の2程度だが、ガスの外層が放出される前は、今の数倍はあったと考えられている。このように宇宙空間に放出されたガスは、次の世代の星や惑星の材料となる。

Zijlstra教授は「生命に必要な物質である炭素は星の中で形成され、惑星状星雲の一部として、宇宙空間に放出されます。このような画像は美しいばかりでなく、私たちの起源に迫る情報を与えてくれるのです」と話している。