宇宙に浮かぶ肉球は、大質量星の誕生現場
【2010年1月25日 ESO】
日本では「出目金星雲」と呼ばれる散光星雲NGC 6334は、猫の肉球にも見えることから、英語では「猫の手星雲」と呼ばれている。天の川銀河の中でもっとも星形成が活発な領域の1つで、大量のちりやガス、そこから生まれた大質量星によって複雑な構造がつくられている。
ラ・シーヤ天文台の2.2m望遠鏡がとらえたNGC 6334の画像が公開された。NGC 6334は、さそり座の方向約5500光年の距離に位置する、直径約50光年の星雲である。その形から、国内では「出目金星雲」と呼ばれるが、猫の肉球にも見えることから、英語では「Cat's Paw Nebula(猫の手星雲)」と呼ばれている。ちりとガスが複雑に入り組んでおり、多数の大質量星が生まれているが、ちりに隠されてその姿を見ることはできない。
この星雲は、1837年にイギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルによって初めて記録された。その後登場した大きな望遠鏡によって、ハーシェルがガス雲の明るい部分(画像左下)だけを記録していたらしいことがわかった。
星雲が赤く見えているのは、青や緑色の光は星雲と地球の間にある物質によって散乱されたり吸収されたりしてしまうからである。赤い光は主に、高温の若い星からの放射で輝く水素ガスが発している。
NGC 6334は、天の川銀河の中でもっとも星形成が活発な領域のひとつで、数万個ほどの星が存在すると考えられている。年齢が数百万歳とひじょうに若く質量が太陽の10倍ほどの青く輝く星が、ちりの奥深くに隠されていている。
1この星雲でとくに目を引くのは、右下に見える泡状の赤い構造である。これは、一生の終わりに近い星が大量に放出した物質か、またはすでに爆発した星の残骸ではないかと考えられている。