極大をむかえたクリムゾンスター
【2010年1月28日 アストロアーツ】
赤い星として有名な変光星うさぎ座Rが極大を迎えて明るく見えている。観察には双眼鏡が必要となるが、その独特の色は一目でわかり、クリムゾンスターとも呼ばれて親しまれている。この機会にぜひ、その真っ赤な姿を眺めてみよう。
文:滋賀県ダイニックアストロパーク天究館 高橋進さん
うさぎ座R(R Lep)は1850年にイギリスのハインドによって発見された変光星で、カタログでの変光範囲は5.5〜11.7等となっています。ただしこれはこれまでに観測されたもっとも明るい等級と暗い等級の数字で、実際の光度曲線はこれとは異なります。うさぎ座Rのミラ型の変光はおよそ427日ですが、これとは別におよそ40年ほどの二重周期をもっています。この40年周期の明るい時期の変光は5〜10等くらいを変光しますが、暗い時期は8〜12等くらいの変光に変わります。最近はわりと明るい時期で、6〜11等くらいを変光しています。
うさぎ座Rは昨年7月頃におよそ10等の極小を経過したとみられています。その後ゆっくりと増光していき12月初めには8等台、1月下旬で6等台後半の光度になっており、ほぼこのあたりで極大になってきていると思われます。ただこの星の極大期の光度曲線はかなりなだらかですので、ここしばらくは明るい状態で見られるものと思われます。
うさぎ座Rはたいへん赤い色の星で、発見したハインドは「深紅色の星」という意味で「クリムゾンスター」という名前をこの星につけています。星の色の赤さは色指数(B-V)で知ることができます。青色のBバンドの等級から緑色のVバンドの等級を差し引いたもので、この数値が大きいほど赤いことになります。シリウスはおおよそ0、ベテルギウスは1.8、赤い色で有名なガーネットスター(ケフェウス座μ(ミュー)、μ Cep)でも2.5ですが、うさぎ座Rは5.5にもなります。いかに赤いかがよくわかります。なお同じくらい赤い星としては、うみへび座V(V Hya)、こと座T(T Lyr)、ケフェウス座S(S Cep)なども知られています。
変光星というと面白味の少ない地味な観測のように思われるかもしれませんが、予想以上にカラフルな色合いや二重星との出会いなど思いがけない楽しみもある観測です。この機会にぜひ変光星観測をされてみてはいかがでしょうか。うさぎ座Rをはじめとして変光星の星図は日本変光星研究会のウェブサイトなどから入手することができます。ぜひお試しください。