土星のダブル・オーロラの動画を見よう

【2010年2月15日 ESA HST

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が土星の南北両極に輝くオーロラをとらえた動画が公開された。土星の両極をいっしょに撮影できるチャンスは15年に1度しかなく、貴重なデータが得られた。


(HSTがとらえた土星のオーロラの画像)

HSTがとらえた土星のオーロラ。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and M. Buie (Southwest Research Institute))

HSTは1990年に観測を開始して以来、さまざまな角度から土星をとらえてきた。2009年に入り、ちょうど真横から見た環と南北の両極を一緒に撮影できるという、めったにない機会がめぐってきた。

土星では両極が同じように太陽光で照らしだされる時期が近づいていた。土星の公転周期は約30年で、太陽のまわりを一回りする間に地球の秋分・春分あたる時期が2度(15年に1回)訪れる。その際に太陽光が赤道に対して垂直に射すのだ。

HSTは、2009年1月から3月にかけて土星を撮影し、土星の南北両方の極に輝くオーロラをとらえた。この静止画をつなぎ合わせて動画が作成された。

太陽からは、絶えず太陽風(プラズマの流れ)が吹いており、太陽系内のすべての惑星に高エネルギーの粒子が届いている。太陽から放出されたプラズマが惑星の磁場に近づくと、粒子が磁場にとらえられて振動し、オーロラとなって輝く。オーロラという現象を通して、目に見えない惑星の磁場の存在を知ることができるのだ。一見すると、土星の南北のオーロラは対称的に見える。しかし、詳細な分析の結果、両者にわずかな違いがあることがわかった。

オーロラのつくる楕円形は、北極の方が南極に比べてわずかに小さく、オーロラが明るいことがわかった。このことは、土星の磁場の分布が均一ではないことを示している。北の磁場が南の磁場よりわずかに強いために、プラズマはより集中しやすく、(南極に比べて)より高いエネルギーを得て大気とぶつかっているのである。このことは、2004年以降に土星探査機カッシーニが得てきた観測データとも一致している。

なお、公開された土星のオーロラの動画は、以下のリリース元で見ることができる。