100億年前の銀河分布に見る銀河形成の歴史
【2010年6月2日 NASA Herschel Science Center (1) / (2)】
ESAの赤外線天文衛星「ハーシェル」による、100億〜120億光年かなたの銀河分布をとらえた画像が公開された。広範な銀河の分布を見ることで、遠方にある宇宙初期の活発な銀河の謎が解き明かされ、当時の銀河の形成進化の過程を知る大きな手がかりが得られる。
ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の赤外線天文衛星「ハーシェル」のスペクトル測光撮像器「SPIRE」が遠赤外線観測により撮影した、100億〜120億光年先の銀河分布の画像が公開された。
画像に写っているのは、おおぐま座の「ロックマンホール」と呼ばれる、星間ガスが少なく天の川銀河の外をクリアに見通せる領域の一角だ。この中に見える1つ1つの点が、それぞれ何十億もの星々が集まった遠方の(つまり大昔の姿の)銀河である。
広い範囲を詳細にとらえているため、その分布にムラがあるのがよくわかる。また、濃く密集している部分ほど、星の形成が異常に活発で明るい遠方の銀河が多いことなど、当時の銀河分布の詳細が見えてきた。この観測から、従来の銀河形成理論では説明できない存在だった「明るい赤外線銀河」の謎を解き明かすことができる。
銀河同士の位置関係を詳細に把握したことで、銀河が互いの重力によって引き合い衝突し合いながら集まり、大銀河団を形成しつつあるということがわかった。当時の宇宙は現在よりも銀河同士が密集していたために銀河同士の接近がひんぱんに起き、それによりガスやちりがかき混ぜられてさかんに星が作られた、そのような銀河が明るい赤外線銀河として観測されていた、というわけである。
今回の成果は、SPIREを使って遠方の銀河を研究する英サセックス大学のプロジェクト「HerMES Key Project」の一環だ。今後さらに広い領域を観測し、銀河の形成の歴史についてさらなる見地を与えてくれると期待されている。