系外惑星の移動の直接撮像に成功
【2010年6月15日 ESO】
地球から約60光年の距離にある星のまわりを回る系外惑星の姿が直接撮像された。惑星の姿は2003年の観測と2009年の観測で中心星をはさんで反対側にとらえらており、移動する系外惑星をとらえた初の観測成果となった。
がか座β(ベータ)星は、がか座の方向約60光年の距離に位置している、太陽の1.75倍以上の質量を持つ恒星だ。年齢は1200万歳で、45億歳の太陽に比べれば、はるかに若い赤ちゃん星である。
そのがか座β星のまわりには、ちりの円盤が2つあり、第2の円盤はメインの円盤から4度ほどずれて交差していることがわかっている。
円盤のずれの原因としては、最初に存在していたメインの円盤から4度傾いた軌道を回る、木星の1〜20倍の質量を持つ惑星が存在して、円盤から物質を引き寄せることで第2の円盤が形成されたのではないかとというシナリオが提唱されていた。
仏・グルノーブル天体物理研究所(LAOG)のAnne-Marie Lagrange氏らの研究チームは、2003年と2008年および2009年に、ヨーロッパ南天天文台(ESO)のVLTに搭載された波面補償光学装置「NACO」を使って、がか座β星のまわりを観測した。
その結果、2003年の画像には円盤内部にかすかな天体らしきものがとらえられた。しかし、2008年と2009年春に撮影された画像には、惑星と思われる天体は写っていなかった。2009年秋に再び行われた観測で、がか座β星をはさんで2003年とは反対側に天体の姿がとらえられた。
つまり、地球から見てこの天体は、2003年以降にがか座β星の背後か前を通過し、2009年秋に中心星の反対の端に到達したのである(前面を惑星が通過する場合、中心星の明るさで惑星の姿はかき消されてしまうので見えない)。
Lagrange氏は、「これまで、間接的に質量の大きな惑星が存在する可能性が示されていましたが、わたしたちの観測によって決定的な証拠が得られました」と話している。
近年では、がか座β星に見られるような中心星を取り巻く円盤は数百万年で消えてしまうことや、ガス惑星の形成は、これまで思っていた以上に急速に進む可能性が示唆されていた。年齢1200万歳というひじょうに若いがか座β星のまわりにおける惑星の存在は、数百万年という天文学的には短い時間スケールでガス惑星が形成されることを示す観測的証拠となった。
なお、このガス惑星は、質量が木星の9倍ほどで、中心星から約12〜26億kmの距離に位置しており、太陽系内の土星と同じくらいの軌道を回っている。公転周期が短いため、おそらく15年から20年以内に軌道を1周するようすを記録できるはずである。この惑星を詳しく調べることで、若いガス惑星を取り巻く大気に関する物理や化学に関する情報が得られると期待されている。