天文衛星「プランク」がマイクロ波で見た、初の全天マップ
【2010年7月12日 ESA/NASA JPL】
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の宇宙背景放射観測衛星「プランク」がこれまで約1年をかけて行った観測データから、9種の電磁スペクトルをカバーする全天マップが作成・公開された。
天文衛星「プランク」が昨年8月から今年6月にかけて収集したデータから作成された、全天マップの低解像度版が公開された。
全天マップ中、宇宙背景放射(CMB)は画像の上部と下部にまだら模様のようにみえている。CMBとは、現在の宇宙の構造を形成するもととなった種のようなもので、わずかな温度のゆらぎとして観測される。
また、画像の中心に見られる明るい水平な帯状の構造は、私たちの天の川銀河である。銀河面の上下に見られる巨大な空域には、天の川銀河のガスやちりが明るく輝いている。
NASAのジェット推進研究所でプランクのミッションにたずさわる研究者Charles Lawrence氏は、「この画像は、天の川銀河と、ビッグバンから約38万年後の宇宙を見せてくれています。天の川銀河からの放射は、数十万年ほどかかってわたしたちのもとに届いています。一方、初期宇宙からの放射は、137億年かかって届いています。この画像には、数十万年前と130億年以上前という異なる年代に起きた現象が見られるのです」と話している。
CMBを全天にわたって詳しく調べるためには、手前にある天の川銀河のガスやちりを見通す必要がある。しかし、ガスやちりを取り除く作業は、まるで干草の山から干草をすべて取り払って、その中にある針を探しだすようなもので、作業完了までには2年以上かかるとみられている。そのため、加工された初データの公開は2012年末に予定されている。また、画像にとらえられたガスやちりにも、天の川銀河を含めた多くの銀河とその構造に関わる情報が含まれている。これらは今後詳しい調査が進められ、プランクがサブミリ波で観測した天体のカタログ「ERCSC」として2011年1月に発表される。
プランクは、少なくとも2012年1月まで全天のサーベイを続けて、ほぼ5回にわたる全天サーベイを完了することになる。