遊佐さん、テンペル彗星(10P)のダストトレイルの撮影に成功
【2010年7月23日 アストロアーツ】
宮城県大崎市の遊佐徹(ゆさとおる)さんが7月14日(世界時)にテンペル彗星(10P)を撮影し、彗星の軌道に沿った線状の光をとらえた。線状の光は、ダストトレイルである可能性が高いとみられており、日本のアマチュア天文家が可視光でダストトレイルをとらえた2例目となりそうだ。
テンペル彗星(10P、以下単にテンペル彗星と記す)は、1873年7月にドイツのエルンスト・テンペルによって発見された周期彗星だ。太陽のまわりを約5.4年の周期で公転しており、これまで20回以上もの回帰が確認されている。同彗星は大型ではないが、地球との位置関係によっては9等程度まで明るくなることがあり、今回も7月上旬の近日点通過前に予報を上回るペースで増光して、10等から9等台の眼視観測による報告があった。
フランスのFrancois Kugel氏(小惑星センター(MPC)コード A77)は、7月14日2時頃(世界時、以下同様)にテンペル彗星を撮影し、軌道に沿った細く長い淡い線状の光をとらえた。
宮城県大崎市の遊佐徹(ゆさとおる)さんは、海外の彗星メーリングリストを通じてそのことを知り、Kugel氏の観測から約8時間後に米・ニューメキシコ州メイヒルの望遠鏡を遠隔操作して撮影にのぞんだ。すると同氏の画像にも、Kugel氏の画像に見られたような軌道に沿った細長く淡い線状の光がとらえられた。
その後、線状の光が何日かにわたって観測されたこと、また彗星の軌道に沿っていることなどから、ダストトレイルを検出したのではないかという可能性が浮上した。
ダストトレイルの可視光観測は、2002年に東京大学の木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡が世界で初めて成功した。一方、アマチュア天文家としては、2009年に和歌山市の津村光則氏がコップ彗星(22P)のダストトレイルを撮影したのが最初だ。遊佐さんがとらえた線状の光もダストトレイルである可能性が高く、そうなれば日本のアマチュア天文家として第2例目となる。
なお当初は、軌道面に広がったダストの尾がダストトレイルと同じ方向に見えている可能性もあったため、即座の判断はできなかった。しかし、長い線状の光の分布がほぼ正確に彗星軌道面と一致していること、線状の光とは別に尾が確認されたことなどから、ダストトレイルである可能性が高いことが明らかになった。
遊佐さんは、(地球が彗星の軌道平面を横切る6日前に)自身がとらえた画像について、「地球からの視線方向とテンペル彗星の軌道の方向とがほぼ一致し、ダストトレイルが重なり濃くなって、検出しやすくなったのではないか」と話している。
現在、そのテンペル彗星は、深夜から明け方に9等前後で見えている。さらに、これから秋にかけての長期にわたって9〜10等の明るさで観測することができる。