やはり土星の衛星レアに環は存在しない
【2010年8月3日 Cornell University】
2008年に発表された研究成果で、土星の衛星レアの周囲には、固体の粒子が環を形成していることが示された。その後、衛星のまわりを詳しく観測した結果、数μmから瓦礫のようなサイズまであらゆる大きさの固体の粒子は発見されなかった。
NASAの土星探査機カッシーニが2005年に得たデータの分析から、土星の衛星レアの周囲には細い環が存在しているとする研究成果が2008年に発表された。
その研究では、土星の磁気圏内に位置しているレアの両側で電子の消失部分が短くとらえられたことなどを理由とし、細い環が存在している可能性を示す証拠だとした。そして、レアの周囲にあるのは、固体粒子でできた幅広い円盤と、少なくとも1つのリング(環)ではないかという点についても言及した。
衛星レアに環が発見されれば太陽系内の衛星としては初となるが、2008年から2009年にかけて行われた別の研究チームによる観測結果から、環の存在を否定する成果が発表された。
観測・研究を行ったのは、米・コーネル大学の研究員Matthew Tiscareno氏らのチームだ。同氏らは、環を真横から見る角度にカッシーニを位置させ、計65枚の画像を撮影した。本当に環が存在していれば、大量の物質が視線の方向にとらえられるはずである。
研究チームは、環の幅が狭い場合や広い場合、環を構成する粒子の大きさがちりのような細かいものから瓦礫のような大きさのものにいたるまで、さまざまな可能性を想定して調べた。たとえば、光を散乱して回折を起こす数μmサイズの粒子を検出するために太陽光の当たらない側を、また、光を反射・吸収するような大きな天体が存在するかどうかについては太陽光の当たる側を調べた。実は、ちりのような小さな粒子に比べて、より大きな瓦礫くらいの物体を探すほうが難しい。レアが反射する光に比べて、瓦礫サイズの天体が反射する光の方が暗いからだ。そのため、短い露出の画像が合成されたのだが、何も見つからなかったのである。
研究チームでは、2008年に発表された帯電粒子(プラズマ)に関するデータをもとに、環に存在する粒子の量と大きさを細かく計算し直した。すると、やはり以前の観測結果が示すほどの量のちりが本当に存在していれば、観測で確認できるはずであることが示された。Tiscareno氏は「レアの周囲では、とても強くて興味深い電磁効果が起きています。それが、(衛星の周囲にある)固形の物質が関与するものではないことが証明されたのです」と話している。