VLTの新しいカメラがとらえた6つの渦巻銀河
【2010年10月29日 ESO】
ヨーロッパ南天天文台(ESO)の大型望遠鏡(VLT)に搭載されたカメラ「HAWK-I」が6つの渦巻銀河を赤外線波長で鮮明にとらえた。
HAWK-Iは、従来使用されているカメラISAACと比べてピクセル数が16倍も増えており、1回の撮影でより広範囲をとらえることができる。ちりやガスが及ぼす影響を取り除いた、赤外線の波長でしか見ることのできない銀河の姿を鮮明に見せてくれ、渦巻く腕を構成している膨大な数の星やその腕で起きている複雑でとらえにくい星の形成過程、渦巻き構造の研究に役立てられる。
そのHAWK-Iがとらえた6つの銀河の特徴を簡単に紹介しよう。
NGC 5247はおとめ座の方向約6000〜7000万光年の距離に位置している。銀河の円盤が正面を向いているため、特徴的な2本の腕や渦を巻く構造をはっきり見ることができる銀河の1つだ。
M100(NGC 4321)は18世紀に発見された銀河だ。腕もひじょうにはっきりしていて、渦巻銀河という天体の構造全体を見せてくれる。この銀河は、かみのけ座の方向約5500万光年の距離にあり、おとめ座銀河団に属している。
NGC 1300は、エリダヌス座の方向約6500万光年の距離にある。典型的な棒渦巻銀河で、銀河中心に見えている棒状構造の両端から腕が伸びている。
NGC 4030は、おとめ座の方向約7500万光年の距離に位置しており、2007年に宇宙飛行士の土井隆雄さんが超新星2007aaを発見した銀河だ。
NGC 2997は、ポンプ座の方向約3000万光年の距離にあり、この銀河を中心とする銀河群でもっとも明るい銀河だ。NGC 2997銀河群や、私たちの天の川銀河を含む局部銀河群は、局部超銀河団(おとめ座超銀河団)の一部である。
NGC 1232は、エリダヌス座の方向約6500万光年の距離に位置する銀河で、棒渦巻銀河と普通の渦巻銀河の中間タイプだ。NGC 1232とその伴銀河NGC 1232Aは、VLTが1998年に初めて可視光の波長でとらえた銀河のうちの2つだが、HAWK-Iが搭載されたVLTは再びNGC 1232に観測の目を向け、今度は近赤外線の波長でさらに美しい銀河の姿を見せてくれた。