渦巻銀河の輝きは、棒状構造によって失われる?

【2010年11月15日 RAS

国際的な研究チームが、ボランティア参加型の銀河分類プロジェクト「The Galaxy Zoo 2」のデータを利用して、多くの渦巻銀河に見られる棒状構造が星形成を止める役割を担っているのではないかという研究成果を発表した。


(赤い棒渦巻銀河と青い普通の渦巻銀河の画像)

(左)赤い棒渦巻銀河SDSS J083051.86+425544.8、(右)青い普通の渦巻銀河SDSS J151132.83+093645.0。クリックで拡大(提供:SDSS)

ハッブル宇宙望遠鏡によるNGC 1300の画像(棒渦巻銀河の一例)

ハッブル宇宙望遠鏡によるNGC 1300(棒渦巻銀河の一例)。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA))

宇宙に存在する恒星のほとんどは銀河に存在しており、1つの銀河に存在する星の数は数億から1000億個にのぼる。そんな星の集まりである銀河の形は、不規則なものからラグビーボールのような楕円形、渦を巻いているものなどさまざまだ。

渦巻銀河のうちの約半数は、銀河の中心部分を横切るような棒状構造を持つ。この構造は、円盤の内外で物質が移動する道のようなもので、銀河の進化に重要な役割を果たしており、とくに中心領域においては星形成を引き起こしているかもしれないと考えられている。しかし、棒状構造の有無が何によるものかはわかっていない。

英・ポーツマス大学の宇宙・重力研究所(ICG)のKaren Masters博士率いる研究チームは、ボランティア参加型の銀河分類プロジェクト「The Galaxy Zoo 2」のデータを利用して、棒状構造と銀河の進化に関する研究成果を発表した。「The Galaxy Zoo 2」とは、第1回目の「The Galaxy Zoo」に続いてさらに詳しく銀河を分類するプロジェクトであり、銀河サンプルを集めた過去最大のデータだ。1回目よりも詳しく、棒状構造の有無まで含めた銀河の形状分類を行った。

その「The Galaxy Zoo 2」のデータを調べた結果、赤い渦巻銀河は青い渦巻銀河に比べて、棒状構造を持っているものが約2倍存在していることが明らかになった。銀河の色には意味がある。青い色は若い高温の星の放射によるもので、銀河で大量の星形成が進んでいることを示している。一方、赤い色をした渦巻銀河では星形成が止まっており、存在するのは年老いた低温の星になる。

研究チームでは、棒状構造によって渦巻銀河の星形成が止まり、輝きが失われるのかもしれないと結論づけた。わたしたちの天の川銀河も棒状構造を持つ銀河だ。つまり、今回の発見は天の川銀河の将来を示すものといえるかもしれないのである。

Masters博士は「『Galaxy Zoo 2』を利用した初の科学的成果を発表でき、とてもうれしく思います」と喜びを語るとともに「渦巻銀河を赤くするプロセスに、棒状構造が主たる役割を果たしているかどうかまでは、まだはっきりしていません。その答えを出すためにGalaxy Zooの一連のデータをより詳しく調べる必要があります」と今後の研究課題について語っている。

「Galaxy Zoo 2」にボランティアとして参加したMike Tracey氏は「ほんの一部であっても、高校のわたしの生徒とプロジェクトに参加することができて楽しかったです。また、科学的成果を生み出すプロジェクトの一端を担えたことをとてもうれしく思います」と話している。

The Galaxy Zoo

膨大な数の銀河の画像を分類する目的で2007年に開始されたプロジェクト。今までに15万人のボランティアが参加し、インターネット上に公開されている銀河の画像のうち、すでに100万枚の画像の分類が行われ、研究に役立てられている。