超巨大ブラックホールが誕生寸前?わずか500年後
【2010年12月2日 国立天文台】
超巨大銀河の中心核にある2つのブラックホールが、あとわずか500年で衝突する可能性があることがわかった。国立天文台の研究グループが明らかにした。
国立天文台の井口聖(いぐちさとる)准教授らの研究グループが、超巨大銀河の中心核にある2つのブラックホールがあとわずか500年で衝突する見込みであることを明らかにした。
この巨大楕円銀河「3C 66B」はアンドロメダ座の方向約2.8億光年先にあり、その中心にある双子のブラックホール(ブラックホール連星)は同研究グループにより2003年に発見されたものだ。このような巨大銀河は銀河同士の衝突合体がくりかえされた究極の姿であり、発見された2つのブラックホールは、衝突前の銀河の中心にそれぞれ存在したものが残り、衝突の歴史を物語っているものと考えられている。
研究グループはその後3年かけて、国立天文台の電波干渉計とフランス・ドイツが共同で運用するIRAM観測所(仏・グルノーブル)のPdBI干渉計とを利用してこの天体からの電波ジェットの変化周期を観測した。その結果、このブラックホール連星が太陽の20億倍の質量を持ち、お互いわずか0.02光年しか離れておらず約500年後には衝突することをつきとめた。これまでにも何十億年のスケールで衝突が予測されているブラックホールは存在するが、ここまで近いものはもちろん初めてだ。
今後この2つのブラックホールは、重力波を放射しながら急激に接近したあと衝突・合体し、さらに超巨大なブラックホールへと進化すると予測されている。
ブラックホール同士の衝突による巨大ブラックホールの形成については、まだ仮説モデル段階であり、実証されてはいない。だが今回、衝突寸前のブラックホールが観測されたことは、ブラックホールの衝突がひんぱんに起きているという可能性を高め、上記のような仮説を強く支持するものとなる。ブラックホールが銀河の形成進化にどのように関わっているのかを検証するうえで、大きなヒントとなりそうなのだ。
研究チームは今後、現在建設中のアルマ(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)を用いたより高精度な観測により、合体直前のブラックホールのふるまいを詳しく調べ、最終的にどのようにしてさらなる超巨大ブラックホールが誕生するのかについて、そしてその誕生(衝突)の過程で放射されると予言されている「重力波」との関係について、解き明かしていきたいとのことだ。