宇宙技術を災害活用へ JAXAによる支援報告
【2011年4月8日 JAXA】
3月11日に発生した東日本大震災の対策として、人工衛星による被災地の状況把握や宇宙滞在用の生活用品の提供など、宇宙技術を利用した支援が行われている。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月6日に開催された宇宙開発委員会において、東日本大震災での支援取り組み等を報告した。
同機構では、国内外での災害地域を観測し当該政府・自治体へのデータ提供を行っている地球観測衛星「だいち」(ALOS)撮影画像に基づいた「災害活動用マップ」を大地震当日のうちに各県対策本部に送付。翌日から大津波による冠水や地殻変動の様子を観測して画像をウェブサイトで公開し、関係機関への情報提供を続けている。
各国宇宙機関による災害時の国際協力枠組み「国際災害チャータ」に基づき、「だいち」のような海外の観測衛星の画像から宮城県内の公園のSOSメッセージが確認され同県に報告された例もある。
地上局がダメージを受けたために固定電話や携帯電話がつながらなくなっている地域では、災害に強い衛星通信回線が力を発揮している。人工衛星「きく8号」(ETS-VIII)や「きずな」(WINDS)を介した通信用の可搬型アンテナが岩手県各所に設置され、対策本部間での会議やインターネットによる安否情報のやりとりなどに利用されている。
また、宇宙飛行士が長く着用できるよう開発された消臭下着なども被災地に届けられた。
今回の報告には含まれていないが、限られた物資で隔離された生活を送る宇宙長期滞在において、宇宙飛行士を被験者とした遠隔診療システムの実験や宇宙線による放射線被曝管理の研究などが行われており、その蓄積が重要な防災対策になり得ることを改めて感じさせる。