太陽系最古の物質CAIから新発見の鉱物

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【2011年5月11日 ハワイ大学

隕石の中に見つかっている太陽系最古の物質といわれるCAIから新しい鉱物が発見された。材料科学では良く知られた物質であったが、実際に天然の鉱物として見つかったのは今回が初めて。ハワイ大学のKrot博士から名を取ってクロタイト(Krotite)と名づけられた。


(新しく発見されたクロタイトの画像)

中央にある2.75mm×4.5mmの卵状のものが新発見のクロタイト。クリックで拡大(提供:Ma et al.,2011)

(クロット博士の写真)

クロット博士の顔写真(提供:ハワイ大学)

隕石の中にはCAIと呼ばれる、カルシウムとアルミニウムが多く含まれた物質が存在することがある。CAIは非常に高い温度で形成される鉱物でできており、太陽系が形成したときに最初に固まってできたものだと考えられている。

今回、アフリカの砂漠で回収されたNWA1934と呼ばれる炭素質隕石に含まれるCAIから、新しい鉱物が発見された。この鉱物の組成はCaAl2O4で表され、材料科学ではよく知られたものであった。

この組成の物質は高圧と低圧領域で見られる。高い圧力領域で見られるCaAl2O4は別の隕石で見つかっていたが、低い圧力領域で見つかったのは初めてで、初期太陽系の研究で多大な功績を残しているハワイ大学のアレクサンダー N.クロット博士にちなんで「クロタイト」と名づけられた。

発見されたクロタイトは2.75mm×4.5mmの大きさで、無色透明の結晶の集合体として存在していた。その周辺にはクロタイトではないカルシウムとアルミニウムの酸化物、マグネシウムとアルミニウムの酸化物、ケイ酸塩が少量ながら薄く取り巻いていた。また、クロタイトには割れ目が入っていたが、その割れ目の中は鉄やアルミニウムの水酸化物で覆われていた。

このクロタイトが経てきたと考えられる歴史はこうだ。まずクロタイトは冷え始めている原始太陽系円盤中の、まだ物質が固まりにくい環境中で形成された。その後CAIが溶けない程度の高温のガスの中に入り、クロタイトを取り巻く鉱物を形成して、隕石の母天体に取り込まれた。母天体に取り込まれた際の衝撃によって割れ目ができたが、隕石そのものは強い衝撃は受けてはおらず、地球に落ちてから割れ目の中の水酸化物が形成された。

46億年前に形成された鉱物はCAIからしか見つかっておらず、このクロタイトについて詳細に調べることは初期太陽系の様子を探る上で非常に重要である。今後の分析結果が楽しみだ。