パルサーからの不思議な尾
【2011年7月15日 Chandra Photo Album】
地球から約1600光年離れたところにあるパルサーに4光年もの長さを持つ「尾」が見つかった。この尾ができる理由ははっきりとわかっておらず、パルサーと尾を取り巻く環境をしっかり理解するためにも、より多くの観測が必要とされている。
NASAのX線宇宙望遠鏡「チャンドラ」がPSR J0357+3205というパルサーを観測したところ、X線で明るく輝く長い尾が発見された。パルサーとは、超新星爆発の後に残った中性子星が非常に正確な周期でパルス状の光を出している天体と考えられている。
このパルサーは2009年にガンマ線宇宙望遠鏡「フェルミ」によって発見された。地球から約1600光年の場所にあり、約50万歳というこの手の天体では「中年」と呼べるような天体だということがわかっている。
もし今回見つかった尾がこのパルサーと同じ距離にあるとすれば、4.2光年もの長さがあることになる。このパルサーは回転エネルギーを少しずつ失いながら光っていると考えられており、同種のパルサーが持つ尾としては最も長いものになる。
通常パルサー周りのX線の尾は、パルサーからのエネルギーを起源として「バウショック」と呼ばれる衝撃波によって作られると考えられている。しかし、このパルサーPSR J0357の尾をバウショックで形成するにはいくつか問題がある。たとえばフェルミのデータから、このパルサーが失っている時間当たりのエネルギーは非常に小さいことがわかっており、今回のチャンドラのデータから予想されるX線の総量と、粒子が得るであろうエネルギーが釣り合わないのだ。
別の方法として、他のパルサーがPSR J0357の近くにあり、そこからのバウショックで尾を作るという考えもあるが、そのようなパルサーは見つかっていない。また、バウショックによって尾が作られる場合はパルサーの近くで最もX線が明るくなるが、PSR J0357の尾が最も明るいところはパルサーから十分離れており、バウショックによる尾を形成するパルサーとは異なっている。
しかし、チャンドラでより詳細な観測を行うことによって、このバウショックモデルを検証できるかもしれない。もしパルサーが尾とは逆方向に動いていたとしたら、それはバウショックのアイデアを支持するものだと考えられる。
いずれにせよ、この尾の謎の解明には、より詳細な観測が必要となりそうだ。