星雲を突くパルサーの「指先」
【2009年4月8日 Chandra Photo Album】
NASAのX線天文衛星チャンドラが、手のような形をした星雲をとらえた。大きさ約150光年の複雑な構造を形成したのは、直径20kmたらずのパルサー(中性子星)である。
チャンドラがX線でとらえたのは、コンパス座の方向約1万7000光年の距離にある星雲。その中心に位置して星雲を形づくっていると考えられているのが、若いパルサー「B1509-53」だ。
パルサーとは、規則正しく明滅する電磁波の信号(パルス)が観測される天体のことだ。パルスが見られるのは、強力な磁場により磁極の方向へ電磁波のビームを放っていて、なおかつ超高速で自転しているからである。その正体は大質量星が超新星爆発を起こしたときに残る、直径20kmの超高密度天体、中性子星だ。B1509-53は強さが地球の15兆倍もある磁場を持ち、毎秒7回転している。
B1509-53からは電子やイオンなど電荷を帯びた粒子が噴き出していて、磁場の中を移動することでエネルギーを電磁波として放出する。こうして、X線で輝く複雑な星雲が姿をあらわすのだ。
物質の流れは、まるで指のような構造を作りだしており、その先端はとなりのガス雲「RCW 89」に衝突している。B1509-53からのエネルギーが伝わったことで、RCW 89の物質も加熱され、X線で輝いているのがわかる。
この画像は3種類のX線で撮影したデータを合成した疑似カラーであり、赤がもっともエネルギーの低いX線、緑が中間、青が高エネルギーのX線に相当する。