褐色矮星と中性子星の意外な共通点

【2007年5月2日 NRAO Press Releases

近年まで電波による観測では検出が不可能とされていた、星のなりそこないである「褐色矮星」だが、その中には規則正しく強力な電波を発するものがあるらしい。


褐色矮星から電波が放出されている現場の想像図

褐色矮星から電波が放出されている現場の想像図。クリックで拡大(提供:Hallinan et al., NRAO/AUI/NSF)

VLAが検出した褐色矮星の電波

VLAが検出した褐色矮星のパルス状の電波。パルスは、1.958時間に1回という規則的なもの。クリックで拡大(提供:Hallinan et al., NRAO/AUI/NSF)

「褐色矮星」とは、質量が小さいため太陽のように核融合反応を起こして自ら光り輝くことはない、いわば星のなりそこないの天体だ。近年まで強い電波を発することがない天体と考えられてきたが、2001年に学生のチームが褐色矮星から突発的に放出された電波を観し、当時の研究者たちを驚かせた。

それから5年後の2006年、アイルランド国立大学ゴールウェイ校のGregg Hallinan氏らの研究チームが、いくつかの褐色矮星を観測したところ、ひじょうに強いパルス状の電波を発するものを3つ発見した。研究チームでは、なぜパルスが観測されたのか、電波はどのように発生しているのかについて次のように説明している。

発見された3つの天体の磁極からは電波のビームが放射されている。しかし、自転軸と磁場の極は一致していないため、自転と一緒に回転するビームが、丁度地球の方向を向いたときに、パルスとして観測されるというのだ。

さらに電波が発生する仕組みについては、地球や木星などの惑星と同様のメカニズムが働いている可能性を指摘している。木星や地球など磁場を持つ惑星では、太陽風によって運ばれたプラズマが磁力線に沿って南北の極に入り込み、両極の上層にある大気の粒子と高速で衝突して、オーロラとして観測されている。

ところで、発見された褐色矮星と同様の性質を示す天体として「パルサー」が存在する。巨大質量星が一生を終えた後に残る、超高密度の中性子星がその正体だ。磁極から放出される強い電磁波が自転に伴ってパルスとして観測されているとみられるが、電磁波が放出されるメカニズムについて、詳しいことはわかっていない。パルスを発する褐色矮星とパルサーを比べてみると、パルサーが1秒間に数回から数百回パルスを放出するのに比べ、褐色矮星の方は、2、3時間に1回とかなりゆるやかだ。

研究チームのAaron Golden氏は、「われわれが発見した褐色矮星は、電波の強さの度合いで言いえば、パルサーと惑星の中間にあたります。電波の発生メカニズムは、パルサーとまったく同じではないとしても、今後の研究で類似点が見つかるかもしれません。そうなれば、パルサーの謎を解き明かすヒントになるかも知れません」と話している。