「あかり」が宇宙からの謎の遠赤外線放射を検出
【2011年8月11日 JAXA】
赤外線天文衛星「あかり」が銀河系の外側の宇宙の明るさ(宇宙背景放射)を観測したデータから、予測外の謎の遠赤外線放射が検出された。宇宙初期のブラックホールからの放射という可能性があり、6月に科学観測を終了した「あかり」が今後に残した新しい課題といえそうだ。
宇宙には、猛烈な勢いで星を生成し、銀河内部の星間ダスト(固体微粒子)が星から放射された紫外線で暖められて赤外線で明るく輝く、いわゆる「赤外線銀河」が存在する。
宇宙初期にはほとんどの銀河でこうした爆発的星生成が起こっていたと考えられており、宇宙科学研究所の松浦周二助教を中心とする国際研究チームではそれを確かめるため、「あかり」を用いて原始の(遠方の)赤外線銀河の群れを宇宙背景放射として捉えることを試みた。
ところがその観測結果から意外なことが判明した。宇宙背景放射の多くは赤外線銀河によるものだったが、それだけでは説明のつかない謎の放射成分が含まれていたのである。
宇宙背景放射を測定するには、観測された光からまず太陽系や銀河系内のダストの放射を差し引き、さらに個々に検出できる比較的近い銀河をできるだけ取り除くことにより宇宙初期の放射だけを抽出する。
その結果得られた、宇宙背景放射の明るさを3つの観測波長について示したものが、画像2枚目だ。最新の銀河進化モデルから推定される宇宙の全銀河による放射に比べて、実際に観測されたものはなんと約2倍も明るかった。
理論モデルで推定されている銀河の放射と比べると、そのピークが短い波長寄りにあることから、宇宙初期のブラックホールからの放射の可能性が考えられる。最近の研究で、宇宙で最初に生まれた星々(第一世代の星)は短い寿命の後に超新星爆発をおこしてブラックホールを遺すと考えられていることを考え合わせると興味深い。
だが、これらの解釈には直接証拠があるわけではなく、さらなる研究調査が必要となる。「あかり」は電力異常により今年6月に科学観測を終了したが、次世代の大型赤外線天文衛星SPICAや宇宙背景放射観測ミッションEXZITなどにより、残された課題の解明が期待される。