宇宙天気予報に役立つ? 黒点の発生を事前に察知

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【2011年9月1日 NASA

太陽の黒点は爆発的なフレアやコロナ質量放出が発生する場所だと考えられているが、どこに黒点が出現するか事前に知ることはできなかった。だが今回、アメリカの研究グループが「日震学」を用いて黒点の出現場所を事前に予測することに成功した。


黒点とコロナループ

SDOの観測データをもとに、内部の活動から黒点が表面化する様子を可視化した画像。オレンジと青の黒点の周りにコロナループと呼ばれる磁力線の流れが見える。動画は〈参照〉リンクから見ることができる。クリックで拡大(提供:Thomas Hartlep and Scott Winegarden, Stanford University)

まだ低気圧にもなっていない段階で台風を予測したり、蝶の羽ばたきから竜巻を予測したりすることは気象予報の夢であるが、兆候を見せる前から「嵐」を予報できる可能性が出てきた。ただし、太陽の話である。

今回、米スタンフォード大学のStathis Ilonidis氏らアメリカの研究グループが、太陽の黒点が表面で観測される前にその出現を予測することに成功した。

黒点とは周辺の領域に比べて温度が低いために黒く見える部分のことで、400年以上も研究が続けられている。近年の研究から、黒点はプラズマの海に浮かぶ惑星サイズの「磁力の島」のようなもので、地球にも影響を与えるフレアやコロナ質量放出(CME)の出元でもあることがわかっている。また黒点は太陽内部で形成され、表面に浮かび上がってきたものが観測されていると考えられている。

この内部にある黒点を見つけることができれば、黒点出現の「予報」として使うことができるかもしれない。しかし太陽の内部をどうやって調べるのだろうか。

地球の内部構造を調べる際には地震を使うことが一般的だが、これを太陽に応用した日震学というものがある。太陽の振動を地震のように直接調べることは当然できないが、「SOHO」や「SDO」などの衛星()で、この震動を見ることができる。

太陽の内部に黒点があると、その部分だけ振動が伝わる速度が周囲のプラズマと比べて速くなる。そこで、衛星で観測して振動の時間差を調べることにより、表面にない隠された黒点を見つけることに成功した。このような黒点の出現予測ができたのは今回が初めてである。

これは太陽の表面から6万km内部にある黒点に対して最も有効に使える手法のようだ。なぜ6万kmが最適な場所であるのかはよくわかっていないが、この位置にある黒点が表面に上がってくるには2日程度かかるため、予報を行うにはちょうどいい場所であった。

フレアやコロナ質量放出は地球のオーロラの原因となるだけでなく、人工衛星の故障の原因ともなる。こういった障害を未然に防ぐため、太陽活動に応じた「宇宙天気予報」というものがある。現在の技術ではまだ大きな黒点の出現しか予想できず、また地球に影響を与えうるものかどうかの予測判断も難しいが、それでも今回の研究成果はこの宇宙天気予報の発達に多いに貢献することになるだろう。

注:「太陽観測衛星」 「SOHO」は1995年に打ち上げられたESANASAの衛星。「SDO」は2010年にNASAが打ち上げた。

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