毎秒500万トン 惑星のX線過激ダイエット
【2011年9月15日 X線天文衛星チャンドラ】
X線天文衛星「チャンドラ」などの観測から、恒星からの激しいX線放射が毎秒500万tもの勢いで惑星を削り取っている現象が発見された。惑星の存在で恒星の自転スピードが速まり磁場が活発になっているためとみられ。
画像は、わし座の方向880光年先にある恒星「コロー2」をとらえたものだ。紫色は星からのX線放射を表しており、周辺領域の可視光データを重ねてある。
このコロー2という名前は、2008年にフランスの系外惑星探査衛星「コロー(CoRoT)」により惑星「コロー2b」(注1)が発見されたことから付けられている。X線天文衛星「チャンドラ」と南米チリのVLTの観測により、惑星(コロー2b)の物質が恒星(コロー2)からのX線放射ではぎとられつつあることがわかった。
もともと木星3個分という非常に重い惑星だが、太陽〜地球間の100分の3という非常に近い距離からX線を浴びせられ、毎秒500万tという勢いで質量を失っている。
チャンドラのデータによれば、コロー2は強力な磁場を持つ活動的な星である。通常これほどの活発さはもっと若い星に見られるもので、コロー2のように生まれてから1、2億年ほど経っているものでは珍しい。だが、非常に近いところにある重い惑星の重力が恒星の自転を速め、磁場の活発化を促していると考えられる(注2)。この画像にも写っているコロー2の伴星はX線放射が確認されていないが、惑星がすぐそばに存在しないからなのかもしれない。
またもう1つの注目点として、このコロー2bが異常に膨張していることがあげられる。「X線放射による影響がどのようなものかはまだ確実ではありませんが、膨張もその1つということはありえます」と、研究チームのSebastian Schröter氏(独ハンブルク大学)は述べている。今後チームでは、このような極限環境が惑星に与える影響について調査していくという。
注1:「系外惑星の命名法」 太陽系以外の恒星に惑星が発見された場合、中心星をaとして、発見された惑星の順にb、c…と付けていく。現時点での最大はg、つまり6個。
注2:「恒星の自転と磁場」 太陽の磁場活動も自転と深く関わっている。赤道付近と両極付近の自転速度の違いにより磁力線がねじれて作られたループが、黒点やプロミネンスなどの表面活動として現れる。
ステラナビゲータで系外惑星の位置を表示
ステラナビゲータでは、550個を超える「惑星の存在が確認された恒星」を追加天体として「コンテンツ・ライブラリ」で公開しており、コロー2(中心星)が存在する方向を星図に表示できます(アルタイルの南西に「CoRoT-2」と表示されます)。ステラナビゲータをご利用の方は、ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードしてください。