偏光からわかったガンマ線バーストの起源
【2011年9月20日 金沢大学】
太陽セイル「IKAROS」に搭載した機器により、宇宙最大の爆発現象であるガンマ線バーストの偏光が観測された。このユニークな観測により、ガンマ線バーストが強い磁場の中から発せられる複数のジェットであることが突き止められた。
ガンマ線バーストとは、ごく短い時間だけ非常に強力なガンマ線が放射される現象のことで、宇宙最大規模の爆発現象として知られている。また、100億光年を超えるような遠方の宇宙で発生しているため、宇宙初期を探る上でも重要な天体現象として知られている。
しかし、この非常に強力なガンマ線を作り出すメカニズムや、そもそもガンマ線バースト天体とは何であるのかという点については、よくわかっていないことが多かった。
これまでの研究ではガンマ線バーストの発生した方向、ガンマ線強度の時間変化、ガンマ線のエネルギーの強さといった点が注目されてきたが、金沢大学などの研究グループは今回ガンマ線の「偏光」に着目することで、ガンマ線が発生するメカニズムに迫ることに成功した。
偏光とは、通常ランダム方向となる光の波の振動が、よく揃った磁場の存在など特殊な条件により特定の方向に揃っている状態の光を指す。
測定に用いられた装置は偏光ガンマ線を検出するために開発された「ガンマ線バースト偏光検出器(GAP)」で、2010年5月に打ち上げられた日本の小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」に搭載されているものだ。
このGAPが2010年8月26日に検出したガンマ線バーストを解析したところ、偏光が見つかった。また、偏光の方向が途中で変化していることも確認された。
今回の結果とこれまでの研究結果を合わせると、ガンマ線バースト発生メカニズムは次のようなものと考えられる。
ガンマ線バースト天体の中心部付近からほぼ光速で噴き出すジェットが発生しており、そこに方向の揃った強い磁場が存在する。その磁場の作用により、振動方向の揃った偏光ガンマ線が発生している。また、偏光の方向が途中で変化していることから、ジェットの内部にはガンマ線を作り出す領域が複数存在しており、偏光の方向を決める磁場の方向が領域によって異なっていると考えられる。
この研究から、偏光ガンマ線が発生するメカニズムとして、電子や陽電子が強い磁場に作用されるシンクロトロン放射(注)が主な要因として考えられそうだ。
注:「シンクロトロン放射」 電荷を持った電子などの高エネルギー粒子が磁場中で曲げられた際に光が発生する現象のこと。特定の方向に偏光して発生するという特徴を持つ。