次なる世界初を目指す「イカロス」、ガンマ線バーストの観測に成功
【2010年7月15日 JAXA】
小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス」が、ガンマ線バーストの観測に成功した。「イカロス」は今後も観測を続け、次は世界初となる「ガンマ線の偏光観測」を目指す。そのデータによってガンマ線バーストの放射メカニズムなどが解明されれば、星の死とブラックホールの誕生の謎に迫ることができるかもしれない。
「イカロス」に搭載されているガンマ線バースト偏光検出器「GAP」は、6月末に機能確認が実施されたが、初期設定を完了した直後の7月7日にガンマ線バーストを観測していたことが、詳細な解析により明らかになった。
「イカロス」は、ソーラーセイルによる航行という工学的な実験とは別に、2つの観測機器を使った観測の実施を目的としている。そのうちの1つが今回ガンマ線バーストをとらえた「GAP」、もう1つは、宇宙空間の塵の分布を調べる「ALADDIN」と呼ばれるダストカウンタである。
「GAP」は、金沢大学・山形大学・理化学研究所の共同研究で作られた、重さが3.5kg、直径と高さが17cmと小型の装置である。その目的は、ガンマ線バーストで放射されるガンマ線の偏光観測だ。
ガンマ線バーストとは、重い星が最期に起こす爆発で、超新星爆発よりはるかに強力な、宇宙最大の爆発現象だ。その爆発では、ガンマ線が放出されブラックホールが作られる。100億光年というはるかかなたで発生しても明るく輝くため、これまでに知られている最遠の天体も、ガンマ線バーストとして発見されている。しかし、その爆発がどのようにして起きるのかなどは、まだわかっていない。
その輝きは、高エネルギーの電子が強い磁場に巻きつき、エネルギーの一部の進行方向が変えられる際に放出される電磁波(シンクロトロン放射)ではないかと考えられている。ガンマ線がシンクロトロン放射で輝いているなら、ガンマ線の光子が強く偏光するため、偏光の観測が決め手となるのだが、ガンマ線の偏光は未だ観測されていないのである。
GAPは、「イカロス」の裏面方向から入射するガンマ線の観測も可能なのだが、偏光観測を行うには、正面からの入射が必要となる。残念ながら、今回は正面からの入射ではなかったため、偏光観測には至らなかった。しかし、「イカロス」は今後も引き続きGAPによる観測を続けて、世界初となるガンマ線バーストの偏光観測を目指す。