望遠鏡総出で観測、銀河中心ブラックホールの激しい放射
【2011年10月4日 SRON】
X線、ガンマ線、可視光線と様々な波長を用いて銀河中心にあるブラックホールの観測を100日間行ったところ、紫外線をX線に変換するブラックホール周囲の高温のガスや、低温ガスの塊が飛び出しているのが観測された。
オランダ宇宙局(SRON)のJelle Kaastra博士らのチームは、地球から約5億光年かなたの銀河「マルカリアン509」の中心にある超巨大ブラックホールの周囲を観測した。最大級の明るさで輝くこのブラックホールは太陽の3億倍の重さを持ち、今なお成長し続けていると見られる。
ブラックホールの周囲には吸い寄せられたガスやダスト(塵)が渦を巻く降着円盤があり、そこからX線・紫外線が放射され、その圧力(輻射圧)によってガスが外に吹き飛ばされている。
円盤は紫外線で輝いており、放射の変動は低エネルギーのX線のそれと同期している。「円盤のさらに周囲に、円盤より高温なガスが浮遊しているためとしか考えられません」(Kaastra氏)。太陽表面よりも周囲の方が高温という「コロナ」のようなものだ。この「コロナ」部分が円盤中の紫外線を変換し、数百万度ものX線として放射しているようだ。これまで活動銀河で見られた現象のいくつかが、この原理で説明がつくという。
また、XMMニュートン望遠鏡とハッブル望遠鏡の観測を組み合わせて得られた画像では、ガス流出のほとんどは、ブラックホールを15光年離れたところから取り囲む、塵を多く含むガスのリングが出元であることがわかった。そこから、高温の拡散ガスに混じって濃い低温ガスの小さな塊が飛び出していたのだ。
その外側では、強いX線によって電離した星間ガスの様子が見える。X線はさらに外側、中心から数十万光年離れた箇所の秒速200kmのガスの流れまで照射している。このガス流は、小さな銀河とかつて衝突した名残りなのかもしれない。
この観測は、ヨーロッパのX線天文衛星「XMMニュートン」やガンマ線天文衛星「インテグラル」、「ハッブル宇宙望遠鏡」や「チャンドラ」「スウィフト」と言ったNASAの衛星、地上の望遠鏡が総出で、2009年末に行ったものだ。広い波長域での観測により、活動銀河中心核をこれまでになく詳細に調査することができ、また、この間に発生した爆発による変動をスペクトル観測で追うこともできた。
多くの機器により継続的な観測を行ったおかげで、大きな成果を挙げることができたのである。