初期宇宙に「化学進化」が進んだ銀河を発見
【2011年11月11日 ヨーロッパ南天天文台】
120億光年離れた銀河から発せられたガンマ線バーストを詳しく観測したところ、すぐそばに別の銀河が存在していることがわかった。これらの銀河は非常に重元素に富んでおり、初期宇宙での銀河の進化の理論に影響を与えそうだ。
ガンマ線バーストは宇宙で最も明るい爆発現象であり、非常に明るいために遠方で発生したものも地球から捉えることができる。そのような現象のひとつ、GRB 090323をNASAのガンマ線宇宙望遠鏡「フェルミ」が捉え、同じくNASAのガンマ線バースト監視衛星「スウィフト」やヨーロッパ南天天文台のVLTなどが観測を行った。
ガンマ線バーストはごく短期間しか明るく輝かないため、GRB 090323が明るいうちに素早くVLTなどで観測できたのは幸運であった。VLTでの観測により、このガンマ線バーストが発生した銀河とは別の銀河がそばに存在しており、地球から約120億光年離れていることがわかった。
また、ガンマ線バーストの光をもとに銀河の組成をよく調べてみると、2つの銀河には冷たいガスがあり、このガスは「化学進化」が進んだものであることがわかった。
この場合の「化学進化」とは、銀河に含まれる恒星が核融合で様々な元素を作り出すため、徐々に組成が変化していくことを指す。一般に年老いた銀河ほど「進化」が進み、重い元素(注)の量が多くなることが知られている。初期宇宙では銀河の進化はそれほど進んでいないと考えられているため、このように重元素に富んだ銀河が120億光年かなた(つまり120億年前の宇宙)に見つかったのは非常に驚くべきことだ。
2つの銀河は非常に近いところに存在しているため、合体する現場を見ているのかもしれない。また、重元素に富んでいるということは、この2つの銀河では星形成が非常に活発に起きているはずだ。もしかしたらガンマ線バーストは、激しい星形成と何か関係があるかもしれない。
注:「重元素」 天文学ではヘリウムよりも重い元素のことを重元素と呼ぶことが多い。酸素や炭素なども重元素として扱われるため、他の分野とは少し意味合いが異なる。