ロシアの火星探査機「フォボス・グルント」、タイムリミットは12月上旬

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【2011年11月16日 米国惑星協会ブログ

11月9日に打ち上げられたものの、火星に向かう軌道に乗れず地球周回軌道に留まっているロシアの火星探査機「フォボス・グルント」と中国初の火星探査機「蛍火1号」だが、火星遷移軌道へ投入できるぎりぎりのタイミングである12月上旬まで努力を続けられることが発表された。


8月のソユーズロケットによる「プログレス」補給船の打ち上げ失敗後、初めてとなる有人の打ち上げが11月14日に行われ、無事成功した。現在ISSに滞在している古川宇宙飛行士ら3名の交代要員となる、米ロ3名の宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)へと運ばれ、ISSの無人化が避けられた。

打ち上げ成功の記者会見が開かれたが、記者からの質問は自然と「フォボス・グルント」の話へと変わっていった。

フォボス・グルントは1996年以来となるロシアの火星探査機で、火星の衛星フォボスのサンプルリターンを目的としていた。また、中国初の火星探査機「蛍火1号」も同乗して火星へと向かうはずであった。しかし現在、上段のエンジンが作動せず、高度200kmの地球周回軌道を回っている。

フォボス・グルントは少なくとも1月までは今の軌道にいられるが、火星遷移軌道のリミットを考えると12月上旬が実質的なタイムリミットになるという。しかし現時点ではまだフォボス・グルントから、機体の状態を知らせるテレメトリ信号が届いていない。これは人工衛星を追跡するステーションが、移動速度の速いフォボス・グルントを捉えることができず、フォボス・グルントが予定外の軌道にいるためだとしている。このため、通信セッションは7分間しかできていない。

テレメトリが回復していないにも関わらず、ロシア連邦宇宙局のポポフキン長官は「探査機は太陽の方向を維持しており、機器は正常に作動している。まだ終わってはいない。エンジニアたちがソフトウェアのアップデートを試みている」と会見でコメントを残している。しかしテレメトリを得ずにどうやって探査機が正常だと言えるのだろうか、と米国惑星協会ブログで述べられている。

探査機との通信を回復するために、エンジニアは2つの困難を乗り越えなければならない。1つは、地球低軌道かつ高速に移動する探査機をアンテナで追跡しつつ通信を行うことができるかという点である。もう1つは、探査機が地平線上にある時間が短いために通信時間が限られており、その限られた時間の中で「通信を確立し、コマンドを送り、データを地上へ降ろす」という一連の行為が果たしてできるかという点だ。ロシア・ノーボスチ通信社は「探査機は遠方で非常に弱い電波を受信するように設計されているため、電波の出力を落として通信ができるか試みている」と報じている。

もし火星遷移軌道に入ることができなかった場合、地球へと落下することになる。「探査機の高度が180kmを切った段階で、フォボス・グルントの最後がどうなるか予測を始める。しかし地球に落下する場合でも、大気圏で爆発し、探査機そのものはばらばらになると確信している」とポポフキン長官は語っている。