アマチュア天文家が原始惑星系円盤の撮影に成功!
【2011年12月1日 Universe Today/Rolf Olsen】
研究者が大型望遠鏡を使って観測することの多い、太陽系外の原始惑星系円盤。なんとそれを、アマチュアの天文家が撮影することに成功した。
生まれたばかりの星の周囲は、星の材料となった塵やガスの残りが円盤状に取り巻いており、その中から惑星などが形成される。これを「原始惑星系円盤」と呼び、地球などの惑星や小天体も、太陽の周囲に残っていた円盤から生み出されたと考えられている。
太陽以外の恒星で、その周囲を公転する惑星や、惑星が生まれつつあるかもしれない円盤が見つかっている。恒星の光がまぶしい中でこうした天体を見分けて観測するには、天文学者は「コロナグラフ」という装置を使うなどの工夫をするが、アマチュアには困難だ。
今回アマチュア天文家による原始惑星系円盤の撮影に成功したのは、ニュージーランドに住むRolf Wahl Olsen氏だ。これまでアマチュアの天文家が原始惑星系円盤の直接撮像に成功したという例は報告されておらず、これが世界初の例かもしれない。
撮影された天体は地球から63.4光年離れたところにある、がか座β星の原始惑星系円盤である。がか座β星は塵の円盤が初めて発見された天体としても知られており、できてからわずか1200万年という非常に若い恒星系だと考えられている。
Olsen氏が大いに影響を受けたのは、1993年に発表された「アンチブルーミングCCD(注)による原始惑星系円盤の撮影」に関する論文だ。Olsen氏は「自分の設備でもこの円盤を撮影することは不可能ではないかもしれないと思った」と語っている。
刺激を受けたOlsen氏は、がか座β星を30秒露出で55枚撮影し、次に同じがか座のα星を同じ条件下で撮影した。がか座α星はβ星とスペクトルのタイプが似ているが、円盤の存在は確認されていない。β星の画像からα星の画像を差し引けば、β星にだけ存在している円盤が残るはずだ。
α星とβ星では明るさが異なるので、光量をそろえるためにα星を撮影する際の露出時間を調整する必要があった。計算によって出てきた露出時間だけα星を撮影し、画像処理を行ったところ、ついに円盤がぼんやりと写っているのが確認されたのである。
「加工後の画像は、加工前とは随分と異なったものである点は残念だったので、がか座β星の中心部分だけ合成した画像を作成したよ」とOlsen氏は語っている。「もっといいカメラを使えばもっといい画像が得られたと思う。ぜひ他のアマチュアの方も試してみてほしい。私個人としてはこの結果にとても満足しているし、誇らしく思っています」
注:「アンチブルーミングCCD」 CCDカメラは光量が許容値を超えると電荷があふれ出て、筋のように見えてしまう。これをブルーミングと言う。このあふれ出た電荷の逃げ道が確保され、ブルーミングが起きないようになっているCCDセンサーを「アンチブルーミングCCD」という。