惑星形成中とみられる星が、周囲のダストで14年ぶりに減光

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【2011年12月12日 VSOLJニュース(283)】

イギリスのColin Henshawさんが12月6日、ぎょしゃ座AB星が14年ぶりに減光していることを発見した。この星の周囲には惑星誕生の現場となるダストの円盤がすばる望遠鏡によって観測されており、そのダストに光がさえぎられて不規則に明るさが変化することが知られている。


VSOLJニュースより(283)

著者:大島誠人さん(京大理)

星は、分子雲と呼ばれるガスから作られます。分子雲の一部が何らかのきっかけにより収縮をはじめると、中心温度が上昇していきます。そして、一定の温度に達すると水素をヘリウムに変える反応が始まり、一人前の星(主系列星)として輝きはじめるのです。そのため生まれたての星、とくに主系列星に達する前の星は多くの場合、まだ周りにガスや微粒子を残していることが知られています。

ぎょしゃ座ABは、Herbig Ae/Be星と呼ばれる天体の一つです。これは、太陽の数倍の質量を持つ星が主系列星に達するすこし前の段階にあるタイプの天体であるといわれています。周囲には残る物質が星の前面を通るなどの原因によって、不規則に変光を示すことが知られています。

この星は平常光度が6等台後半〜7等前後とHerbig Ae/Be星としてはもっとも明るく、近い距離にある天体です。そのようなこともあり、この天体は生まれつつある星の物理を知ろうとする研究者の重要なターゲットとなってきました。2004年には、この星の周りに円盤があり、うずまき状に惑星系が形成されつつある様子をすばる望遠鏡が直接捉えたという話題もありました(参照:天文ニュース 2004/04/19「すばる望遠鏡、うずまき状の惑星誕生現場を発見」)。

ところで、ぎょしゃ座ABはそれほど目立った減光の頻度が高い天体ではありません。前回減光したのは1997年の冬のことでしたが、1等ほど減光したものの数日で元の明るさに戻ってしまいました。その後はまた長らく6等後半の光度を保ちつづけていました。しかし、12月6.9日(世界時)にColin Henshawさんが、この天体が14年ぶりに7.4等まで暗くなっていることを確認しました。この報告をうけたハンガリーのFidrich Robertさんの確認観測で、7.3-7.4等であることが報告されました。平常光度が6.8等前後なので、現在0.数等暗い状態ということになります。

この減光がどれくらい続くかはまったく予想がつきません。7日にHenshawさんが報告したところでは、また平常光度に近づいているのではないか、とのことです。前回の減光が数日で終了したことを考えると、今回もこのまま元の光度に戻ってしまうのかもしれません。あるいは、逆にまた減光を始めて、長く暗い状態を続けるかもしれません。そのような点でも興味深い天体です。大きめの双眼鏡があれば容易に観測できるターゲットですので、ぜひこの機会に目を向けてみてはいかがでしょうか。

ぎょしゃ座ABの周辺星図

〈参照〉

  • VSOLJニュース
    • 明るいHerbig Ae/Be星、ぎょしゃ座ABが減光開始か(283)
  • baavss-alert: 2789、2791、2794
  • Fukagawa, M. et al. "Spiral Structure in the Circumstellar Disk around AB Aurigae" PASJ, 605, 53 (2004)

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