若い星の円盤に惑星誕生の証拠 世界初の鮮明撮像
【2011年2月18日 国立天文台】
すばる望遠鏡の最先端装置で観測された2つの原始惑星系円盤の画像から、中心星に近い領域の詳細な構造が初めて明らかにされた。惑星誕生によると思われる構造も見られ、惑星形成過程の理解への大きな一歩となりそうだ。
国立天文台などの研究者からなる国際チームがハワイにある「すばる望遠鏡」を用いて、2つの原始惑星系円盤(注1)の、中心星から太陽系と同サイズに近い領域の構造を詳細に解明することに成功した。
1枚目の画像は、ぎょしゃ座AB星と呼ばれる約100万歳の若い星だ。各画像の中心の黒い円は、星の周囲が見えやすくなるよう恒星の光を隠している。2009年に搭載されたコロナグラフ(注2)「HiCIAO」(ハイチャオ)を使い、従来の画像に比べて中心領域まで見えるようになっている。
星をとりまく円盤の内側の領域には二重のリング構造やギャップ(空隙)が見える。また、円盤の中心が中心星の位置からずれており、リングが円盤面から傾いていることがわかる。これらは今回初めて明らかになったもので、円盤内にすでに惑星ができていることを示唆している。
2枚目はおうし座にある、ぎょしゃ座AB星とほぼ同じ年齢の「LkCa 15(リックカルシウム15星)」だ。中心星近くで円盤が途切れているギャップ構造を直接撮像した初めての画像となる。茶色の円で隠された中心星部分の下に白くアーチ状に見えているのが、中心星の光に照らされた円盤の一部だ。星とアーチとの間が暗い部分は、半径約50AU(1AU=太陽〜地球の平均距離)のギャップで、これは、すでに生まれた惑星の影響で物質が少なくなったところと考えられる。
これら2つの観測結果はいずれも、惑星の誕生現場と考えられてきた原始惑星系円盤の中心領域に初めて迫ったもので、(1)この領域では実際に惑星が誕生している可能性が高いこと、(2)生まれた惑星が円盤に及ぼす影響が円盤の形態に反映されていることが初めて直接観測から明らかになった。
また、太陽系の場合、木星や土星よりも遠い領域で巨大惑星を形成するには少なくとも数千万年かかると思われていたが、わずか100万年程度で惑星がすでにできていることは、惑星形成モデルにとって大きな制限となる。
一方、近年では、太陽の1〜2倍程度の質量の星を周回する系外惑星が直接観測され、太陽系でいえば海王星よりさらに遠い距離に、木星の10倍程度の質量の惑星が存在することもわかってきた。このような遠方の惑星は、上述の2つの星の周囲で生まれていると思われるような惑星が進化したものかもしれない。今後のさらなる観測で、そのような遠方惑星がどのように誕生するのかを解明することが期待される。
注1:「原始惑星系円盤」 誕生したばかりの星の周囲に存在する円盤状のガス雲。この円盤から小天体や惑星が誕生する。惑星は重力によって物質を掃き集めながら成長するため、その軌道は円盤の空隙となる。
注2:「コロナグラフ」 中心星の光を隠すことでその周囲を見えやすくする観測装置。日食で太陽が隠れた時に周囲のコロナが見えるのと同じ仕組みによる。