40光年先に発見 地球型ダイヤモンド惑星
【2012年10月15日 Yale News】
米イェール大学などの研究グループが、約40光年先の系外惑星「かに座55e」の3分の1以上がダイヤモンドでできている可能性を明らかにした。地球と全く異なる組成を持つ岩石惑星の存在は、系外惑星の研究において画期的な発見だ。
40光年先にあるかに座55番星の周囲に見つかっている5つの惑星の1つ「かに座55e」が、「ダイヤモンドの星」と見られることがわかった。地球の表面は水と花崗岩で覆われているが、この星はダイヤモンドと黒鉛で覆われているという。地球と根本から違う化学組成の岩石惑星の存在が示されたのはこれが初めてのことだ。
この惑星は直径が地球の2倍、質量は8倍あるスーパーアース(巨大地球型惑星)だ。米イェール大学のNikku Madhusudhanさんらは、昨年初めて行われたトランジット観測(注1)からわかった惑星の直径と、最新の質量の見積もり値とを総合して惑星の化学組成を推測した。
惑星の主星であるかに座55番星が酸素よりも炭素を多く含むということは以前から示されていたが、研究チームでは今回、惑星の材料として炭素と炭化ケイ素がかなりの量存在していること、逆に水の氷はほとんどなかったことを確認した。また過去には、化学組成が地球に似ているという前提から大量の過熱水(注2)の存在も考えられていたが、今回の研究から、水は全く存在せず、主な組成成分として炭素(黒鉛とダイヤモンド)、鉄、炭化ケイ素、そしておそらく若干のケイ酸塩を含むらしいこともわかった。ダイヤモンドは惑星の質量の3分の1以上を占めると考えられ、これは地球3個分にあたる。
地球の内部は酸素を多く含み、炭素は質量比で1000分の1にも満たない。炭素豊富なスーパーアースの発見により、遠方の岩石惑星が地球と似たようなものだという仮定はできなくなった、というのがMadhusudhanさんの見解だ。地球と変わらない大きさの系外惑星の地化学・物理学的プロセスの研究に新たな道が開かれたといえる。炭素が多いということは、その天体の熱環境や地殻活動の歴史にも関わってくる。
「質量や年齢がわかれば大体の構造や歴史がわかる恒星と違い、惑星はもっと複雑です。今回見つかったダイヤモンド豊富なスーパーアースのほかにも、地球からそう遠くない惑星でもっともっと多様な発見が待ち受けていることでしょう」(プリンストン大学教授のDavid Spergelさん。今回の研究には参加していない)。
Madhusudhanさんらは昨年、炭素が豊富な大気を持つ遠方の巨大ガス惑星を初めて発見しており、以前から予測されていた炭素豊富な岩石惑星の存在への期待を強めていた。ダイヤモンド惑星の存在の可能性とその組成を初めて明らかにした今回の研究成果をさらに確固たるものにするために、今後は惑星の大気と主星の組成をさらに詳しく調査していくという。
注1: 「トランジット観測」 惑星が恒星の手前を横切った時のわずかな減光から、その存在やサイズを知る観測。
注2:「過熱水」 何らかの条件変化により、通常の沸点である100度を越えても液体のままの状態にある水。
ステラナビゲータで系外惑星の位置を表示
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