謎の赤外線光は無所属の星々から?
【2012年10月29日 NASA】
空に広がる謎の赤外線の光が、銀河の外に飛ばされた星々からのものという研究成果が、NASAの天文衛星の観測をもとに発表された。
「夜空に広がる赤外線の背景光は大きな謎でした。わたしたちはこの光が、銀河と銀河の間に取り残された星のものということを示す新しい証拠を手に入れました。1個1個はあまりにも暗くとらえられない星の光が、集団として見えていると考えられます」(米カリフォルニア大学のAsantha Coorayさん)。
全天に広がる赤外線の光は、NASAゴダード宇宙飛行センターのAlexander Kashlinskyさんらにより、非常に遠方にある宇宙初期の星と銀河からのものだという説が提案されていた(参照:2012/06/12「広範囲でとらえた宇宙最初の光」)。
今回Coorayさんらは、うしかい座の方向にある月50個分の広い領域をNASAの赤外線天文衛星「スピッツァー」で250時間観測した。Kashlinskyさんらの観測と比べ、感度は低いが観測範囲がより広いため、赤外線背景光の分布がより詳細に調査できる。
その結果、観測で得られた赤外線背景光の分布は、宇宙初期の星と銀河についての理論やシミュレーションとは一致しないと結論づけられた。現在のものほど大きくなく、また数も少ないとされる初期の銀河からの赤外線と考えるには明るすぎるという。その代わりに浮上したのが、銀河、あるいは銀河の集団にすら所属せず、それらの外の空間にかすかに散在する天体で説明しようとする考えである。
「散在する星の存在を予測している論文を読んでいるときに気づきました。これらの理論で、私たちがスピッツァーでとらえたものが説明できると」(Coorayさん)。
こうした星々は、銀河のサイズが徐々に大きくなっていった初期の宇宙で、銀河同士の衝突により、あるいは小さな銀河が大きな銀河に飲み込まれる劇的な過程で放り出されたと考えられている。
今回の研究成果を確かめるために、今後は可視光で同様の分布を見つけるなどの確認が必要になってくるという。