すばる望遠鏡が解き明かす逆行惑星の成り立ち
【2013年1月25日 国立天文台】
国立天文台と東京大学の研究者を中心とする研究グループは、逆行惑星を持つ惑星系HAT-P-7に、これまで知られていなかった伴星(連星をなすもうひとつの恒星)と、もうひとつの別の長周期の巨大惑星が存在することを発見した。
はくちょう座の方向1044光年かなたの恒星HAT-P-7は、2009年にすばる望遠鏡が世界で初めて逆行惑星を発見した天体だ。通常、惑星は主星の周りの円盤から形成されるため、惑星の公転方向は主星の自転方向(=円盤の回転方向)と一致するはずである。しかし、HAT-P-7の惑星HAT-P-7b(以下「惑星b」)は公転方向がその逆である「逆行惑星」で、どのようにして逆行軌道になってしまったのかはまだよくわかっていなかった。
最近の理論研究によれば、惑星の公転軸方向が主星の自転軸方向と大きく異なると、惑星の公転軸は主星の自転軸に合わせて短時間で方向を変えてしまう。逆行軌道では、惑星の公転軸方向が主星の自転軸方向と真反対であるため、逆行軌道は長期間維持されないと考えられる。そのため、惑星が出来たばかりのころに逆行軌道になったとしても、なぜそのまま現在に至っているのかが説明できないのである。
HAT-P-7bが逆行していることを最初に発見した国立天文台フェローの成田憲保さんらの研究グループでは、そのプロセスを明らかにするため、2009年からこの惑星系の撮像観測を行ってきた。その結果、中心星HAT-P-7と連星系をなす伴星HAT-P-7B(以下伴星B)が見つかり、さらに惑星bの外側かつ伴星Bより内側に巨大惑星HAT-P-7c(以下「惑星c」)があることも確認した。
伴星や複数の惑星は、お互いに重力的な影響を及ぼす。伴星Bや惑星cが惑星bに対して古在機構(画像3枚目)という現象を引き起こして惑星bの軌道の傾きを少しずつ変化させ、主星の自転軸が惑星の公転軸に揃うのを阻み、惑星bの逆行に至ったというシナリオが考えられることが、今回の観測からわかった。
この結果は、観測による明確な証拠によって逆行惑星の起源について示唆を与えた初めての結果となった。研究グループ代表の成田さんは「今回の結果は、一つの逆行惑星系の謎を解くだけでなく、他の逆行惑星や軌道の大きく傾いた惑星、軌道離心率の大きな惑星などがどのように形成されるかについても、直接撮像による外側の伴星の存在確認によって理解していく道を開いたものです」と語っている。
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