ガスを引きはがされる矮小銀河をシミュレーションで再現
【2013年2月12日 ポツダム天体物理学ライプニッツ研究所】
コンピュータシミュレーションでは大量に形成されるものの、実際にはわずかしか観測されていない矮小銀河。国際研究チームのシミュレーションで恒星の材料となるガスを引きはがされる様子が再現され、これらが輝かない銀河となる可能性が浮上している。
私たちの天の川銀河は、アンドロメダ座大銀河(M31)とともに局部銀河群と呼ばれる銀河のグループを成し、局部銀河群はさらに大きな銀河のグループに属していると考えられている。こうした銀河の分布は、複雑な網の目構造(宇宙の大規模構造)として広がっている。
銀河の分布を再現するコンピュータシミュレーションでは、矮小銀河が多数形成される。しかし、天の川銀河の周囲で実際に観測されているのは、ほんのわずかだ。
この不思議な食い違いを解明しようと、独・ポツダム天体物理学ライプニッツ研究所(AIP)のStefan Gottlöberさんらの国際研究チームが、天の川銀河から数千万光年以内にある銀河の位置や動きのデータを元にシミュレーションを行った。すると、網の目構造に対してあまりに高速で動いているために、銀河中のガスが引きはがされている矮小銀河がいくつか見つかった。研究チームではこれを「Cosmic Web Stripping(網の目構造によるガスの引きはがし)」と表現している。
ガスがなければ、それを材料とした恒星も生まれず、矮小銀河は小さく暗いまま、私達の目に留まることはないだろう。行方不明の多数の矮小銀河は、こうした、暗すぎて見えない銀河という可能性が考えられる。