宇宙最古の星の年齢をさらに正確に推定
【2013年3月12日 NASA】
推定年齢がなんと宇宙よりも古いてんびん座の恒星。精密な距離測定で誤差を縮め、この年齢をもっと引き下げる研究成果が発表された。
米ペンシルバニア州立大学のHoward Bondさんらの研究により、てんびん座の恒星HD 140283の年齢が145億歳と見積もられた。宇宙の年齢が138億歳であることから考えると奇妙な結果だが、見積もりの誤差がプラスマイナス8億年あり、一番短い見積もりであれば宇宙の年齢の範囲に収まる。2000年の研究ではこの恒星は140億歳以上、最長で160億歳にもなると見積もられていたので、大きな改善だ。
今回の研究では、恒星の年齢の矛盾を解消するために、ハッブル宇宙望遠鏡による観測で距離が測定しなおされた。従来の観測では約20億年の年齢の差を生む距離の誤差を含んでいたが、精密な測定で誤差を5分の1に減らすことに成功した。距離がわかれば星の真の明るさもわかり、さらにそれが年齢の手がかりとなる。精密になった距離のデータと恒星の核燃焼のスピードや元素の量、内部構造についての理論モデルから年齢を探り、これまでの推算より年齢を縮めることができた。
この恒星は見かけの動きがひじょうに速く、また重元素(水素やヘリウムよりも重い元素)の量が少ないため、銀河系を取り囲むハローという、古い星を多く含む領域から太陽の近くにやってきたと考えられている。
「さまざまな材料から判断して145億歳という値が得られ、誤差を考えればなんとか宇宙の年齢に収まりました。比較的近くにあり、しかも明るい恒星ですから、恒星の年齢を推算する研究にはもってこいの天体です」(Bondさん)。