合体銀河から広がる700万度の高温ガス雲
【2013年5月1日 Chandra Press Room】
X線天文衛星「チャンドラ」が、衝突銀河「NGC 6240」を取り巻く巨大な高温ガス雲をとらえた。銀河内で続く爆発的な星生成により広がったものと考えられる。
へびつかい座の方向約3億3000万光年彼方にあるNGC 6240は、天の川銀河と同等サイズの2つの銀河が衝突合体しつつある現場だ(画像1枚目)。
Emanuele Nardiniさん(ハーバード・スミソニアン天体物理学センター)らの研究チームはX線天文衛星「チャンドラ」を用いて、この衝突銀河を取り巻く巨大なガス雲をとらえた(画像2枚目)。30万光年(天の川銀河直径の約3倍)にわたって広がるガス雲の総質量は太陽の100億倍もあり、700万度以上という高温だ。
NGC 6240では銀河中のガスも衝突により激しくかき混ぜられ、少なくとも2億年前から激しい星生成(スターバースト)が続いているようだ。こうしたスターバーストではひじょうに重い星がその短い一生を終え、超新星爆発とともに次々と最期をむかえる。Nardiniさんらは、こうした超新星爆発のラッシュによって酸素やネオン、マグネシウムやケイ素といった重元素がまき散らされ、周囲に広がっていると考えている。
今後この天体がたどる運命としてもっとも可能性が高いのは、2つの渦巻銀河が数百万年かけて合体し、新しい楕円銀河ができあがるというシナリオだ。ただし現存するガスのうち、どのくらいの量が新銀河にとりこまれたり宇宙空間に散逸したりするのかは定かではない。
銀河が今よりも密集していた初期宇宙では頻繁だった銀河同士の衝突。比較的近傍にあるNGC 6240は、その壮大な現象について多くのことを教えてくれる。