太陽の1300倍の大きさの黄色超巨星

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【2014年3月14日 ヨーロッパ南天天文台

双眼鏡でも簡単に見られる南天の星が、太陽の1300倍もの大きさの黄色超巨星であることがわかった。伴星がくっついた連星であることや急激な変化のようすも明らかになっており、発見例の少ない天体の貴重な観測成果となっている。


黄色超巨星HR 5171 Aとその周辺

黄色超巨星HR 5171 Aとその周辺。クリックで拡大(提供:ESO/Digitized Sky Survey 2)

HR 5171の想像図

HR 5171の想像図。主星(左)と伴星(右)がくっついた連星であることが明らかになった(提供:ESO)

HR 5171の位置

HR 5171の位置(緑の十字マーク)。日本より南の地域で、双眼鏡で手軽に見ることができる。クリックで拡大(「ステラナビゲータ」でシミュレーション作成)

ケンタウルス座の方向12000光年彼方にあるHR 5171 Aは、6.1等から7.3等まで明るさが変わる黄色超巨星だ。黄色超巨星は恒星の中でもとりわけ明るく巨大な天体で、これまでに天の川銀河内で10個前後しか見つかっていない。星の進化途中において、変化が激しく不安定なつかの間の段階にあり、噴き出したガス物質が大きく広がる大気を形成している。

Olivier Chesneauさん(仏・コートダジュール天文台)ら国際研究チームがヨーロッパ南天天文台(ESO)のVLT干渉計を用いて行った観測研究から、このHR 5171 Aが太陽の1300倍もの直径を持つことが明らかになった。これまで見つかった黄色超巨星としては最大、すべての恒星の中でも十指に入る大きさだ(最大のものはたて座UY星で、太陽の1500倍以上の直径とされる。ベテルギウスやアンタレスは700〜1000倍程度)。

観測から、この星と表面を接する伴星が存在することもわかった(画像2枚目)。1300日周期で回る伴星が、地球から見て主星の手前や背後に来ることによる明るさの変化から判明した。主星の外層ガスを奪い去る伴星の存在は星の進化に大きく影響するため、とても重要な発見である。

さらに過去の観測データの検証から、ここ数十年間で天体が膨張して表面温度が下がっていくようすも明らかになっている。恒星の進化にともなう短時間での急激な温度変化がとらえられた例は、これまでごくわずかだ。


HR 5171 Aの位置

この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。場所を南半球に設定してから、「V0766 Cen」(変光星名)を検索・表示してください。