シミュレーション研究で超新星爆発の「ニュートリノ加熱説」が有望に
【2014年4月21日 国立天文台天文シミュレーションプロジェクト】
スーパーコンピュータ「京」を用いた研究から、重い星が重力崩壊して最期を迎える超新星爆発はニュートリノ加熱によって起こる可能性が示された。京の高い能力を活かし、より現実に近い設定でシミュレーションを行った成果によるものだ。
国立天文台の滝脇知也さん、福岡大学の固武慶さん、京都大学の諏訪雄大さんらの研究チームは、スーパーコンピュータ「京」を用いて超新星爆発の大規模数値シミュレーションを行い、大質量星が最期を迎える重力崩壊型の超新星爆発が「ニュートリノ加熱」によって起こる可能性を示した。
超新星爆発は複雑な高エネルギー現象が絡みあうため、どのようなメカニズムで起こるのかを解き明かすのは天文学者が50年も頭を悩ませている難問だ。ニュートリノ加熱説(図2枚目のキャプション参照)は有力ではあったものの、これまでは星の形状を完全な球と仮定するなど現実の超新星爆発とは異なる設定のシミュレーションしか行えなかったため、正しいかどうかの議論を進める事ができなかった。
今回、スーパーコンピュータ「京」を用いることで従来より現実に近い設定で超新星爆発の計算を行うことができるようになり、自然な仮定のもとで超新星が爆発する初めての例が得られた。シミュレーションでは、ニュートリノによる加熱で衝撃波の内側で対流が起こり、対流がさらに加熱を促進して衝撃波が成長するというメカニズムで超新星が爆発する様子を作り出すことができた。これはニュートリノ加熱説を支持する、強力な証拠と言える成果である。
一方で、超新星の観測からわかる典型的な爆発エネルギーの10分の1程度の爆発しか再現できていないことや、今回のシミュレーションより重い星でも爆発の証拠が得られるかどうかを確認するなど、残された課題もある。研究チームでは、さらに大規模なシミュレーションを行って詳細な超新星爆発の理解を目指していきたいとしている。