銀河団から謎のX線 ダークマター候補の可能性も
【2014年6月27日 NASA/ESA】
70個以上の銀河団の観測から、由来のわからないX線輝線が検出された。ダークマター候補として存在を予測されてきた「ステライルニュートリノ」の初検出という可能性があり、今後の検証が待たれる。
NASAの衛星「チャンドラ」とヨーロッパ宇宙機関(ESA)の「XMMニュートン」による観測で、70個以上の銀河団(距離1億〜数十億光年)から不思議なX線輝線が検出された。Esra Bulbulさん(ハーバード・スミソニアン天体物理学センター)ら研究チームでは、この輝線は既知の物質ではあてはまらない波長のもので、「ステライルニュートリノ」と呼ばれる粒子が崩壊した兆候かもしれないとしている。
ステライルニュートリノ(右巻きニュートリノ)は、ニュートリノの質量が0でないという近年の観測結果を受けて存在が予測される未検出の粒子だ。「弱い力」と「重力」で相互作用をする通常のニュートリノと違い、重力での相互作用しかしないとされる。銀河団の総質量の大部分を担うダークマター(その重力的作用のみで検出される謎の物質)の正体の候補でもある。
Bulbulさんらは「今回の成果をもってダークマターを見つけたと言うのは飛躍的すぎますが、もし本当であれば大発見です」と、興奮の中にも慎重な姿勢を崩していない。X線輝線は検出感度ぎりぎりのかすかなものだったが、論文公開を受けて他の研究者からも同様の輝線を見つけたとの報告があり、誤検出の可能性は小さくなった。だがX線輝線が通常の物質由来である可能性も皆無ではなく、またステライルニュートリノであったとしても、それが宇宙に存在するダークマター全ての正体とは限らないという。
チャンドラやXMMニュートン、また日本の衛星「すざく」などの膨大な銀河団データの分析や、2015年に打ち上げ予定の衛星「ASTRO-H」による観測など、これからの検証が待たれる。