金やプラチナは中性子星の合体で生成された
【2014年7月2日 国立天文台】
国立天文台と東京大学による研究で、金やプラチナ、レアアースなどが中性子星の合体によって生成された可能性がひじょうに高いことがわかった。天の川銀河周辺の銀河における個々の星の元素組成を測定して明らかになった。
金やプラチナ、またレアアース(希土類)に分類される元素は、重元素の中でも特に「R過程元素」と呼ばれ、中性子の密度が極端に高い状況で多く作られるものだ。実際にどのような現象で合成されるのかはよくわかっていなかったが、中性子星の合体で放射されたと考えられるガンマ線バーストの観測でR過程元素が作られた兆候が見つかったことなどから、中性子星の合体で作られたという可能性が高まってきている。
東京大学と国立天文台のチームはこの説を検証するため、天の川銀河とその周囲約80万光年の範囲の矮小銀河において、1つ1つの星の組成を測定した。
すると、鉄とユーロピウム(レアアースの一種)の増加量の違いから、鉄が作られる重力崩壊型の超新星爆発とは異なるプロセスでユーロピウムが作られるということが示された。また、銀河の重さごとのユーロピウムの量の違いをもとにR過程元素を作り出す現象の頻度を見積もったところ、中性子星合体の予測頻度と一致していた。
さらに、中性子星合体の際に合成したR過程元素が、これまでに考えられていたより高速で広範囲に広がることがわかった。R過程元素を過剰に含む星が見つかっていないことがこの説のネックとなっていたが、R過程元素がじゅうぶん拡散したのであればこの矛盾は解消される。
今回の研究から、中性子星の合体は天の川銀河内で100万年に10〜20回程度の頻度で起こると見積もられる。この見積もりは、中性子星の合体で発生する重力波(大きな質量を持つ物体の運動などで生じる)の観測計画のめやすともなる。
今後研究チームでは、矮小銀河の星々に含まれるR過程元素の量をさらに詳しく測定し、中性子星合体説のさらなる確証とより精密な頻度の検証を目指す。